 |
|
|

性感染症(その2)―梅毒―
今回は「性感染症(その2)」として梅毒(syphilis)についてお話します。わが国では、第2次世界大戦後の世相の乱れた時期に急増しましたが、ペニシリンなどの抗生物質の普及により激減しました。しかし1960年代と1980年代後半にやや増加がみられましたが、最近では減少傾向にあります。米国では2001年、2002年に急激な増加があり、日本でも今後注意が必要です。
梅毒の病原体は梅毒トレポネーマ(treponema pallidum subsp. pallidum)で、スピロヘータの一属です。長さ6〜20μmで、先のとがった8〜20のらせん状の嫌気性細菌です。女性よりも男性に多い病気で、世界的に分布しています。
感染経路は、性行為またはその類似行為によって感染力をもつ皮膚、粘膜の病変から感染します。接吻などで感染することもあります。感染が起こりやすい期間は、第1期、第2期の皮膚、粘膜の病変が存在している期間です。梅毒に感染してから第1期の症状が出現するまでの潜伏期間は約3週間です。また先天梅毒は、梅毒に罹患している母体から胎盤を通して胎児が感染します。胎盤が完成する妊娠4ヶ月以降の期間に起きます。
後天性梅毒は4期に分けられます。第1期は、初期硬結、それに次いで鼠径リンパ節腫脹が生じます。初期硬結は、男性では亀頭・冠状溝・包皮・尿道口などに、女性では陰唇・陰核・尿道口・膣・子宮膣部・肛門などに単発性の硬い浸潤を起こし、やがて中央が潰瘍化します。硬結は3週間余りで消退します。
第2期は感染後12週頃からバラ疹(バラ色の小丘疹)、15週頃から丘疹(1cmまでの大きさの硬い皮膚の隆起)、18週頃から膿疱(限局性の化膿した皮膚)などを生じ、個々の発疹は数日〜数週で消え、これを反復し3年ほど続きます。扁平コンジローム(扁平いぼ状の増殖物)は肛門周囲・外陰部・口角・腋下・乳房下などで扁平隆起性丘疹となり、増殖、びらん潰瘍が起きて悪臭を発します。ここには多量のトレポネーマが存在します。
第3期は感染後3〜4年で始まり、非対側性に比較的大きい発疹を生じ、多くの場合瘢痕が残ります。結節性梅毒疹やゴム腫、粘膜疹などが出現します。
第4期は、心・血管系に大動脈瘤・大動脈炎・心内膜炎を起こします。神経系には脳膜炎・髄膜癆・進行麻痺梅などを起こし、予後不良です。
先天梅毒は、出世時に肝脾腫・黄疸や栄養発育不良などの症状がみられます。生後数年で症状が現れる早期先天梅毒では、口囲のびまん性扁平浸潤や、皮膚に紅斑・丘疹・膿疱・水疱など、また梅毒疹・鼻炎・肺炎・軟骨炎などがみられます。学童期以降に症状を呈してくる晩期先天梅毒では、ハッチンソン3徴候「@永久歯の上顎門歯が短くビア樽型をし、咀嚼面がM型に陥凹したハッチンソン歯、A実質性角膜炎(黒目の病気)、B内耳性難聴」が特徴的で、他にゴム腫などがみられます。
治療はペニシリンを第1選択とし、第1期では2〜4週間、第2期では4〜8週間、第3期では8〜12週間の投与を行います。ペニシリンアレルギーの場合や妊婦には別な抗生物質(ミノサイクリン、アセチルスピラマイシンなど)を使います。治療開始後数時間で梅毒トレポネーマが破壊されるため、発熱・悪寒や発疹の増悪などがみられることがあり注意が必要です。ワクチンはありません。
梅毒には、HIVをはじめとする他の性感染症(STD)の合併の危険が高いので、早期発見、早期治療が大切です。またセックスパートナーも一緒に検査して感染の有無を確認することが必要です。自分の身体は自分の責任で守りましょう。
|
|