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「ペットから病気がうつる?」―イヌからうつる―
イヌとヒトは2万年前からともに暮らしていま
した。
はじめは、ヒトが狩をした後の獲物を食い残
したおこぼれを狙って、ヒトに近づいて来まし
た。そして時間をかけて徐々にその距離は縮まっ
てきました。しかし数十年前までは、イヌはヒ
トにとっては家族ではなく、番犬であったり、
家畜であったり、保温のための生き物だったの
です。その当時はイヌからうつる病気のことな
ど問題として考えることもなく、ある程度の距
離をもって一緒に暮らしていました。
比較的多くみられる、イヌからうつる病気を紹
介しましょう。
《パスツレラ症》(Pasteurellosis)
パスツレラ菌による感染症で、イヌ、ネコ、
ウサギなどから感染します。動物では無症状で、
健康なイヌやネコの口の中にいる常在菌です。
咬まれたり引掻かれたりしたときに感染します
が、時には空気中にいる菌を吸い込んで感染す
ることもあります。
ヒトに感染したときは、局所の疼痛(ズキズ
キ痛む)、発赤、腫脹、化膿などの症状があり
ます。呼吸器感染症や耳炎、副鼻腔炎などを起
こすこともあります。特に老齢者や病気などで
抵抗力の弱くなった人が、ペットとの過度のス
キンシップや食べ物の口移しなどで、この菌の
感染が起こることが確認されています。
《レプトスピラ症》(Leptospirosis)
レプトスピラはスピロヘータというらせん状
の細菌で、イヌ、ネズミ、家畜、野生動物など
から感染します。この菌は、人や動物の健康な
皮膚にふれただけで感染する(皮膚感染)とい
う大きな特徴があります。
レプトスピラ症は、昭和10年代には毎年数千人
の規模で発生し、毎年1000人近くの人が死亡す
るほどの危険な感染症でした。その後衛生環境
の改善とネズミの駆除が進み、発生数は激減し
ましたがゼロにはなっていません。
主にドブネズミが保菌し感染源となっていま
すが、その菌が尿から排泄され、水の中でも生
きていけるので、川などでア遊んでいるときに感
染します。イヌでは感染しても無症状の場合も
ありますが、ヒトと同様に発熱や黄疸、腎炎を
起こし、死亡する場合もあります。ほとんどの
哺乳動物に感染しますので注意が必要です。こ
の菌は、水の中ではとても長い間生き続けます
が、熱、乾燥、消毒薬には弱く、通常の消毒方
法で簡単に死滅します。
《瓜実条虫症》(Cestodiasis)
イヌ、ネコに多い寄生虫で、長さが50cm以上
にもなる長い虫です。イヌやネコのウンチやお
尻に小さな虫がついていることで気づくケース
が多いようです。染経路は複雑で、瓜実条虫に
感染したノミやシラミの幼虫がついた畳やカー
ペットを幼児が舐めることによって感染します。
たとえヒトが瓜実条虫の虫卵を直接食べても
感染しません。
ノミやシラミの駆除が大切ですが、ノミやシラ
ミの体内に条虫の幼虫が寄生しており、つぶす
ことにより汚染されるので決して潰さないよう
に気を付けてください。
《狂犬病》(Rabies)
動物(すべての哺乳類)からうつる怖い共通
感染症の代表で、狂犬病ウイルスによる感染症
です。発展途上国を中心に世界中で発生してい
ます。一昨年、わが国でも二名の方の発症があ
りましたが、外国(フィリピン)で感染したこ
ともあり、治療開始が遅かったために残念な結
果に終わってしまいました。
日本は島国であることが幸いしています。法
整備もできており、イヌでは狂犬病予防法によ
る集団接種、家畜では家畜伝染病予防法、ヒト
では感染症法で感染症から守られております。
またペットの輸入時に検疫を行うことで、国外
からの侵入も防いでいます。
狂犬病ウイルスは唾液に多く含まれており、
傷口から侵入すると神経を伝わって脳に向かい
ます。進行スピードは比較的遅く、1日に8〜
22mmで、傷口から脊髄までの距離により到達日
数が違います。脳に達すると神経症状が出て、
治療不可能になってしまいますので、受傷後は
できるだけ早く免疫血清やワクチン接種などに
よる治療を行う必要があります。また狂犬病流
行地へ旅行するときには、前もって狂犬病ワク
チンを接種してから旅行することが必要です。
治療は、イヌや動物に咬まれたら、まず石鹸
を使って流水で十分に傷口を洗って下さい。消
毒の必要もあり、医療機関の指示を受けて下さ
い。また免疫血清や狂犬病ワクチン摂取による
治療も必要でしょう。また、この伝染病は第四
類伝染病に指定されてますので、速やかに保健
所に届け出なければなりません。
《エキノコックク症》(Echinococcosis)
エキノコックスという多包条虫による感染症
で、イヌのほかキツネや野ネズミ、ブタなどの
野生の動物からうつります。動物の糞便中に排
泄された虫卵が、ヒトの口から入り肝臓に侵入
し、肝不全を起こす病気です。虫卵が入ってい
る沢の生水などを飲んでも感染します。イヌの
エキノコックス症は獣医師が届け出なければな
りません。
予防はイヌに駆虫剤を使用します。またイヌ
が野ネズミなどを食べないように放し飼いには
十分注意が必要です。日本では特に北海道全体
に拡大しています。
現在、動物と一緒に生活をする人たちが増え
ています。ペットを自分の子どもと同じ、ある
いは子ども以上に可愛がって一緒に暮らしてい
るご夫婦やお年寄りもたくさんおります。昔は
屋外で飼っていたイヌも、今では家の中で飼う
ようになり、身近なところでヒトの伴侶動物
(コンパニオンアニマル)として共同生活をす
るようになりました。認知症などはペットと共
に暮らすことで、療養生活(QOL)の向上や治療
効果が期待されるようになりました。ペットは
ヒトの心を癒やしてくれる大切な仲間です。ペッ
トを飼う方々には、ヒトと動物の共通感染症に
興味を持ち、正しい知識を得て「病気は治るも
の」「病気がうつるのは予防できるもの」とい
う認識をもって頂きたいものです。
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