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「海外での感染症を予防するために2」―旅行者下痢症―

1、旅行者下痢症の原因
 海外旅行者の30%から50%以上が旅先に着い て5日以内に下痢を経験します。この割合は、 保健衛生事情の悪い途上国に旅するほど多くな ります。この旅行者に見られる下痢症を「旅行 者下痢症」といいます。症状は、吐気、嘔吐、 発熱、頻回弁意、腹痛、水様便、血便、粘液便 などです。
 原因は、大腸菌、サルモネラ、赤痢、カンピ ロバクター、コレラなどの細菌や、エンテロウ イルスなどのウイルス性、アメーバ赤痢などの 原虫(寄生虫)で起こります。その他、軽い場 合は、過労、ストレスの他、飲料水が硬水であ ることから下痢をする場合もあります。
 下痢を起こしやすい体質の人や免疫力が落ち ている人はかかりやすいので注意が必要です。 特に安全な飲料水の確保は欠かせません。ミネ ラルウォーターや湯冷ましを手に入れましょう。 細菌性の「旅行者下痢症」では、抗生物質が 治療として有効ですが、予防薬として服用する と菌が耐性(抗生物質が効かなくなる性質)を 獲得して、無効になる場合があります。また、 強い下痢止め、吐き気止めの使用は症状を悪化 させる可能性があります。

2、軽症の下痢の治療
 軽症:水分を充分に取り、消化の良い食事を少 量づつ頻回に取る。
 中等症〜重症:絶食し、水分補給を行う。
 世界保健機構(WHO)では、簡便な補給液とし て次のような方法を紹介しています。
 @塩4g(ティースプーン1杯)+A砂糖40g (ティースプーン8杯)+B水1.(コップ5杯) 経口で飲めないほど嘔吐がひどい場合は、点滴 が必要です。ポカリスウェット、アクエリアス などのスポーツ飲料も有効です。抗生物質は医 師の判断に委ねましょう。

3、特定原因の下痢疾患と対応のしかた
 主な下痢をきたす疾患と対応のしかたを紹介 します。
@病原性大腸菌感染症
 毒素性大腸菌が多くの旅行者下痢症の原因にな ります。症状はコレラとよく似ています。水分 補給と消化の良い麺類(パスタなど)、スープ、 果物(自分で皮がむけるもの)などでエネルギー 補給を行って下さい。
A細菌性赤痢
 赤痢菌を含む汚染された水や食べ物、手指を介 して感染します。潜伏期は2日。一般的には高 熱で始まり、腹痛と頻回の水様性下痢の後で粘 液と血の混じった便に変わります。水分補給と 抗生物質で治療します。適切な治療をしないと、 3ヶ月ほど便中 に菌を排泄し ます。医師の 判断に任せま しょう。
B コレラ菌感 染症
 コレラ菌を含 む汚染された 水や魚介類を 食べて感染し ます。典型的 な場合は、米 のとぎ汁のよ うな水様便が 1 0 回以上も出 ます。潜伏期 は1日から3 日 で、発熱はほ とんどありま せん。水分補 給と抗生物質で治療します。
Cその他の食中毒による下痢症
 サルモネラ症は、潜伏期が半日から1日で、高 熱と黒緑色の粘血便が特徴です。卵や生の鳥肉 が原因食であることがあります。腸炎ビブリオ 感染症は、魚介類が原因食のことが多く、潜伏 期は3時間〜20時間です。腹痛と水様便が特徴 です。黄色ブドウ球菌食中毒は、菌が産生する エントロトキシンによって起ります。嘔吐が強 いことが特徴です。発熱はなく粘血便が見られ ます。
Dウイルスによる下痢症
 旅行者下痢症の10%程度はウイルスが原因です。 小児の胃腸感染症で有名なロタウイルスが最も 多く、潜伏期は48時間〜72時間です。症状は嘔 吐、下痢、発熱です。
E原虫(寄生虫)による下痢症
 アメーバ赤痢は多くは無症状ですが、便中にア メーバを排出して感染源になります。発熱はな く、イチゴジャムのような血便を出し、大腸に 潰瘍を作ることもあります。潜伏期は2週間で すが、何年 も経ってか ら発病する こともあり ます。治療はメトロニダールという抗寄生虫薬 があります。同じく原虫でクリプトスポリジウ ム症は、激しい水様性下痢と腹痛を特徴としま す。健常者が感染しても自然治癒しますが、免 疫が落ちた人が感染すると重症化します。有効 な治療法はありません。

 以上のように「旅行者下痢症」はさまざまな 病原体が原因となり、その症状は腹痛、下痢、 血便などほとんど同じです。下痢の程度が軽い 場合は、充分な水分補給と整腸剤で治癒します。 ヒトの便を介して感染することにもなるので、 適切な検査と治療を受けることをお勧めします。

(社団法人日本医師会発行「海外旅行必携ハン ドブック」より転載)



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