ハルゼミについて

ハルゼミと赤松について教えていただきました。平成21年6月記載
 この記事を読んでハルゼミを発見した方は、事務局におしらせください。

ぐんま昆虫の森の金杉です。

以前より、県内のハルゼミの生息場所を調べています。
ハルゼミは5月頃に出現するセミでマツ(特にアカマツ)に依存しており、ある程
度まとまったアカマツがないと生息していません。
昔(30年以上前?)は、県内のあちこちにいたようですが、おそらく、マツ毛虫
(マツカレハ)防除、その後に続く松枯れ防止のマツノマダラカミキリ駆除のため
の殺虫剤空中散布、また、開発や松枯れの侵攻にによるアカマツの減少によって生
息場所が年々減少しているようなのです。
2002年頃よりハルゼミの「抜け殻」を中心に調べはじめて、昆虫の森や桐生が
丘公園、鹿田山(笠懸)、庚申山(藤岡)、多々良沼(館林)、八王子丘陵(太
田)、伊香保などの生息を確認できました。
この間にも、5年前に吉井町で鳴き声が聞けた場所が、今年行ってみるとアカマツ
がなくなっていました。

観音山丘陵はアカマツが点々としかないようなので、ほぼ生息していないだろうと
思っていましたが、偶々、一昨日に家族で観音山(観音様の見物)に行き、その周
辺にはアカマツ林があったのでここならばまだいるかもしれないと感じました。

昨日も再度訪れて観音様の裏側から尾根筋を探しましたが、見つかりませんでし
た。
掃除をしているおじさんに聞いたところ、5月には鳴き声を聞いたと言っていまし
(ハルゼミは知らなかったようですが・・)
おそらく発生時期を過ぎているので、鳴き声はもう聞けないと思います。

ハルゼミは、低地から低山地のアカマツ林に生息しています。
GW頃から発生しはじめて5月末から6月上旬頃までが発生期です。
アカマツの高い場所から鳴き声は聞こえるのですが、その姿を見ることはかなり難
しいです(私も標本以外見たことがありません)。
鳴き声は、「ゲーキョ、ゲーキョ・・・」と鳴き始め、その後「ムゼー、ム
ゼー、ムゼー・・・・」と本鳴きをします。

一匹が鳴き始めると、周囲の個体が呼応するように鳴き始めます(輪唱)。
昆虫の森では6月10日に鳴き声(1匹のみ)を聞きましたが、それが今年最後のよう
です。
抜け殻は長さが1.5p程度で、アカマツの幹の2m以上、特に4〜6m位の場所に
付いている場合が多いです。

稀に1m位の低い場所やアカマツの脇に生えた別の木の幹に付いていることもあり
ます。
個体数の少ない場所では、慣れないと抜け殻を見つけるのは難しいです。

観音山のアカマツは、一見、かなり残っているように見えますが、尾根筋を中心に
松枯れで既に枯れている、もしくは衰弱している木がほとんどでした。
松枯れを起こすマツノザイセンチュウを駆除・防除するための樹幹注入剤を投薬し
ている(シールが貼ってあります)のですが、あまり効き目がないようです。
枯れたマツは松枯れ拡大防止のため、伐採していきますので数年後にはアカマツは
激減してしいると思います。
マツに依存しているハルゼミも風前の灯火状態にならなければと危惧しています。

また、ご参考までにインターネットでハルゼミを検索すると、山地に生息するエゾ
ハルゼミと混同している場合が多いようです。
エゾハルゼミは、山地(赤城や榛名、玉原などの標高800m前後から上部)の広葉
樹林に生息し、6月が発生のピークです。
「ミョーキン、ミョーキン、ケ・ケ・ケ・ケ・・・・・」と合唱します。

また来年になってしまうと思いますが、もし機会がありましたら是非、観音山のハ
ルゼミのことも気にとめていただけると嬉しいです。

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   金杉 隆雄 (昆虫専門員)

   群馬県立ぐんま昆虫の森 企画普及係
  376-0132 群馬県桐生市新里町鶴ヶ谷460-1
  Tel: 0277-74-6441(代表)
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