2003年
9月1日発行
No.100
未だ解決されない 痴呆の諸問題

  私の医院でも、毎年何人かの方々が徐々に、または突然痴呆となり、施設収容を余儀なくお願いすることになります。何か特別の予知方法があると良いのですが、決定的な手段はありません。だれでも高齢となれば、簡単な物忘れくらいは致しますが、どのくらい進行したら、必ず痴呆になるか等の決め手はありません。
 以前にも書いたのですが、痴呆にはアルツハイマーと脳血管性痴呆があります。私の医院では純粋なアルツハイマー型痴呆は比較的少なく、脳血管性痴呆が最も多く、ついで前二者の混合型が続いています。典型的なアルツハイマー型でありながら、MRIで検査してもまったく変化のない場合もあります。
 脳梗塞症例の全ての方が痴呆になるわけではなりません。一般に、広範囲に脳梗塞が発生している場合、多発性に小梗塞が発生している場合、記憶の回路と関係する場合(視床の内側部と海馬)があります。
 アルツハイマー氏病では、最初に最近の出来事を忘れやすくなり、時間や人の区別、場所の認識などが侵されていきます。また幻覚や妄想なども合併します。脳血管性痴呆は、記憶は障害されているが判断力や理解力がよい場合とか、一様でないことがあります。これを「まだら痴呆」ということもあります。
 一旦痴呆になってしまうとなかなか決め手となる薬剤はありません。アルツハイマー病に有効とされているアリセプトという薬があります。私の医院で、長期に用いたにもかかわらず進行し、家庭生活が送れなくなった方もあります。また一方で、特別な治療をしていないにもかかわらず、痴呆の進行が停止している方もあります。
 現在でも新たな薬物の開発が行われています。一応の期待はもてると思います。
 結局のところ、高血圧、高脂血症、糖尿病にならないように注意する、タバコや酒を中止する、軽い脳梗塞でも、症状がなくなっても、長期にアスピリンやその他の脳の血流改善剤を服用しつづけることなどが重要になります。また、頭を使い、毎日絵や字を書いたり、ぼんやりしないことも重要です。
(院長)