2004年
7月1日発行
No.105
痴呆の対策

 先ずは体力維持が重要と思います。私の患者さんの中で、痴呆症状が出てから急速に悪化し、脳梗塞、心疾患、糖尿病を併発して数年で寝たきりとなり、亡くなってしまう方があります。一方、十数年も変化せず、歩行は困難でも坐位を保ち、体の栄養状態も良く過ごしておられる方もいます。後者の多くは配偶者や肉親の献身的な介護がある場合です。三食をバランスよく摂ることが脳の栄養にも関与します。
 第二に精神や心を安定させることです。間違いや失敗を意地悪く指摘してはいけません。物盗られ妄想は、大家族で住んでいる場合、お嫁さんに向けられることが多くあります。これらのことを充分考慮しながら、家族や別世帯の子供さんも協力する必要があります。
 第三に、その人の最盛期であった時代や歴史を深く考慮して、尊敬の念をもって接することです。何回も聞いた自慢話も初めて聞いたように心掛けることです。不満が解消し、体調も良くなり、集中力も改善されます。
 第四に人生の目標が持てるように協力していただくことです。明日の小さな目標、期待だけでも良いと思います。私の大学時代の恩師で、96歳を越えても毎日勉強され、外国語の辞書を編纂されている方がいます。はじめから痴呆にならないような生活態度をいまさらマネすることは意味がないかもしれませんが、集中することで脳内の活性物質が生産される可能性があります。簡単な作業を続けることで、痴呆の悪化を予防することも出来ます。
 毎日少しずつでも日記を書いたり、絵を描く、ゲームをする等のことがあります。家庭内で以上のことが家族の都合で不可能な場合は、適所の介護支援施設にお廠いしましょう。留守番が出来るからと、一人で日中過ごされていると、どうしても無為に過ごして老化や痴呆の進行を促進することになりかねません。
 若い方もいつしか年をとります。早くから予防を心掛けるべきです。私もこの7月で70歳になりました。
(院長)