2006年
5月1日発行
No.116
脳疾患とめまい

 めまいの原因となる脳疾患には、頭蓋内新生物(腫瘍等)、炎症性疾患、脳変性疾患、脳血管障害等があります。実際に私の外来で主にめまいを訴えた方のうち、上記疾患の中では一部脳腫瘍があったものの大部分は脳血管障害(脳出血や脳梗塞)でした。
 著しいめまいや平衡障害を訴えたお二人の老人が現在外来通院を続けています。異常な腫瘍性のものが小脳橋角部という場所にあります。幸い良性で、高齢のために腫瘍が育つのもゆっくりです。ご本人は不自由ですが、なんとか生活しておられます。
 脳血管障害では比較的多数の方が受診されますが、めまい症状ばかりでなく、発生した部位の症状も合わせた診断が必要になります。結局MRI等の画像をみながら総合的に診断していきます。脳血管障害は比較的小脳や脳幹部に発見出来る割合が多いようです。
 しかし、著しいめまいに伴って嘔吐や眼振があるにも拘らず、はっきりした画像上の病変が発見できない場合も多数あります。このような場合は、めまいに対しては輸液や他の薬剤を併用し、しばらく経過をみることで軽快が得られます。
 めまい症状は脳の他の部位の代償的な働きで改善することもありますから、繰り返し検査を必要とし、また神経学的な病状をよく観察する必要があります。原因の明らかでないめまいを頻回に生ずる場合、高血圧症、糖尿病、肥満、心疾患、喫煙などの危険因子がある方には今後充分に注意が必要です。小脳や脳幹に梗塞を生じる可能性が高くなるからです。 頭の移動する位置によって生じるめまいは、
 前回述べたように、内耳や三半器官の障害を考える必要があります。また、めまいは貧血、心疾
患、不整脈等の疾患にも注意が必要です。
 患者さんご自身も日常体調の変化を充分に把握するよう努めて下さい。
(院長)