2008年
1月1日発行
No.126
糖尿病と脳梗塞

 

最近、初診の患者さんで、すでに糖尿病があるか、糖尿病とは知らないで不摂生をしていた方が体調の変化を訴えて受診しています。幸いにして、多<の方が軽症の脳梗塞症状を有しているのみですが、なかには症状発現から数週間放置していた方もいました。現在1、此較的早期である場合は投薬で改善する可能性がありますが、日時を経て固定してしまった場合、なかなか症状は改善しません。

 症状としては、平衡障害(ふらつき)、言語障害、半身麻痺等があります。見逃されてしまうのは視力障害、特に視野の狭窄です。何か見にくい、へんだと気付いていたのですが、視力が低下していないため、視野の狭窄に気付いていなかったためです。

 後頭葉という頭の後部にある脳には視覚中枢があります。この部位から出た神経線維は側頭葉の底部を通り、頭の中心部の底部で視束交叉という部位を介し、両眼に半分ずつ達します。

従って視覚中躯が障害されると片眼を閉じて、片側の眼だけで見ると視野の半分が全く見えなくなります。これを半盲といいます。結局、両眼で顔面を左右に振らないと目の前の光景が見分けられず、自動車の運転も出来なくなります。 脳にはこのように部位に応じていろいろな機能があります。運動領が侵されれば半身麻痺などの運動障害を生じます。しかし部位によっては何の症状も来たさない場合もあります。これを無症性脳梗塞といいます。症状が出ないといって決して安心してはいけません。特に糖尿病の方は血糖を正常範囲に維持し、運動をして肥満になることを防止しなければなりません。これにより血管の動脈硬化が予防できます。

 さらに現在ではアスピリンをはじめとした幾つかの血液の流動性を改善する薬剤が用いられます。しかし、人によっては出血や胃炎、胃潰瘍などの副作用を来たすこともあります。少しずつ薬も改良されています。十数年後には良い薬が出現する可能性があります。

 (院 長)