2008年
3月1日発行
No.127
認知症の治療

老齢の人が増加するにつれて、認知症の人も増加します。出来るだけ認知症を予防し、健康な老後を送って戴きたいと医師は考えています。しかし感冒をひくように、どなたも認知症になる危険性を有しています。まずは初老期の単純な物忘れ、これは誰でもあることですから心配しないようにしましよう。

現在、確実に認知症になってはじめて治療が認められています。認知症に有効と認められている薬はアリセプトという薬のみです。しかしこれはアルツハイマー病という疾患のみに認められています。

アルツハイマー病は日本でも最近増加していると言われます。しかも確実な診断が極めて困難です。血液や髄液検査では不可能ですし、唯一の確実な診断は脳組織診断のみです。従って現在は個々の医師によるさまざまな考え方によって診断されています。

認知症は動脈硬化による脳梗塞の結果や、脳の萎縮により生ずることも多いのです。この場合はアリセプトは用いられないことになります。

軽症アルツハイマー病のみにこの薬の使用が認められていたのですが、2年前より、重症でも許可されるようになりました。しかし家族の顔も忘れてしまう状態では、有効であった例は経験しておりません。従って投薬は無駄なことになります。

更に昨年、今までの倍量まで増加しても良いことになりました。正直のところ、この薬がそれほど有効であるとは考えられません。認知症に本当に有効な薬が出現するには、これからも大変な年月と費用を要すると考えられます。

私の体験例で、アリセプトを投与しながら、3年程で亡くなってしまった方もあります。一方、認知症がかなり進んだ状態にありながら、特に有効な投薬も受けないで10年以上も元気な方もあります。

認知症を防ぐには、日々緊張して、自らの精神活動を最高に維持しようと努力することが、差し当り、実質的で最も安価な方法であると考えています。

 

(院長)