2008年
5月1日発行
No.128
脳梗塞の初期治療

テレビなどで時々放映されていますが、脳梗塞に対する非常に早い時期の治療が話題になっています。使用される薬剤は組織型・プラスミノゲン・アクチベー夕ー、略してt-PAという物質です。従来長く用いられたウロキナーゼと同じ作用起点を有しています。血栓を溶解し、閉塞した血管を再開通させる働きがあります。

しかし使用するにあたり、発症後3時間以内でなければならないという厳しい制約があります。これ以上の時間を要した患者さんに用いると、頭蓋内出血等の副作用が増加するからです、また時間内であっても、頭蓋内出血等の副作用の対処のために、常時数人の専門医がチームを作っている施設に限定されます。たとえ早期であっても病院到着までの時間、画像診断その他の検査時間などが加わり、投与までに時間が間に合わない例も多いのです。

著効例では麻痺が間もなく改善され、数日で通常歩行が可能になったこともあるようです。

保険適用となって2年を経過し、前橋市内の病院で100例位は投与されているようです。半数以上は良好な経過をとっています。

これほど時間が制約されない、発症後9時間以内なら使用出来るという薬を開発中です。時間的制約が少なく、良い方向にありますが、副作用の問題がどう解決されるか期待されます。

このような患者さんは救急隊とt-PA投与可能な施設の連携があり、私たち開業医に来院することはありません。逆に、すでに麻痺が完成して数週間を経た患者さんが来院されることがあります。麻痺が軽度で歩行可能だったため、軽快すると自己判断をしていたために、麻痺が進んでしまった例です。多くの場合、糖尿病などの合併、脳動脈硬化が進展していた方で、ある程度時間を経過すると脳細胞が死滅して回復困難になるのです。

また頭痛、手足のしびれ、一過性に意識を失う等の人が、後日脳梗塞を生じることがあります。日常生活において大酒、喫煙、食べ過ぎによる肥満等が危険因子となります。

                                                                               

(院長)