2008年
11月1日発行
No.131

       医者だって病気になる

著者は群馬大学薬理学名誉教授の田所作太郎先生です。私が学生時代よりご指導戴き、現在もお世話になっている先生です。薬物に関してはたくさん著書がありますが、この度は自ら体験された病気に対して詳細な自己分析を行い、標題の本を出版されました。今でもお元気に過ごしておられます。私は時々お会いしているのですが、いつも頭脳明晰で元気でおられ、このように多彩な疾患を持たれていたとは知りませんでした。これらの体の不調は75歳を過ぎた頃から発生しているとのことです。

政府は75歳以上を後期高齢者として、これから医療費を要する患者さんをふり分け、治療域を狭めようとしています。この闘病記にあるように、的確な治療により我々は寿命を延ばし、有意義な人生を送れる可能性があります。皆さんもこれからはご自分の状態をよく知り、良い治療を受け、長寿を全うしてほしいものです。

本の中にはたくさんの病気の記述がありますが、当初は先生も軽症の高血圧のみでした。それがある時、原因不明の高熱が持続、これが成人ステイル病と判明しました。この疾患は免疫異常が引き金になり、リューマチに似たような症状を示します。これに用いたステロイドという薬の使用のために糖尿病となりました。特殊であったのは、最初からインシュリン注射療法を行ったことです。この治療の自己体験の記録が皆様によく役立つと思います。

もう一つの本書のポイントは前立腺肥大にあると思います。男性は高齢になると前立腺肥大となり、いろいろな排尿障害が出現します。私も前立腺肥大があり、排尿の変化について、先生の記述がよく参考になっています。前立腺は癌もよく発生する部位で、医学部の同級生がこのために命を失っています。排尿困難になれば、最後には田所先生も経験された手術が必要となります。この疾患をどのように克服し、日常生活を送ってきたかも、読者に大いに参考になるはずです。私も先生の体験を参考にし、日々の診療を充実させる努力をしています。本は待合室の本棚にあります。

(院長)