2009年
7月1日発行
No.135

       脳死判定と臓器移植

これまで、人間の死は脳の不可逆的な機能の完全喪失があり、臓器移植の必要が差し迫っている時のみ法律上の死として認められてきました。日本全国で80例以上がこの規準に達し、臓器が摘出され、他の患者さんに移植されました。群馬県では昨年初めて前橋赤十字病院でも脳出血で脳死に至った方から臓器が摘出され、多数の困っている患者さんに移植されました。

一方、現在の法律では、15歳以上のみ臓器提供が認められているため、先日の新聞記事にあったように、幼児がアメリカで心臓移植を受けざるを得ない状況になっています。

諸外国からは、日本人は自国民を慎重に取り扱い、臓器移植を他国に依存していると批判されています。昨年、国際移植学会が自国以外での移植手術の自粛を求め、本年WHOもこの方針を決定し、日本の関係者は法改正を迫られることになりました。

わが国では既に10数年脳死について議論し、脳死判定には厳しく対処してきました。4月27日から衆議院厚生労働委員会で4つの案を審議していましたが、6月18日の衆議院本会議で年齢制限を撤廃する臓器移植法改正案が可決しました。本人の拒否の意思がなく、家族が同意すれば15歳以下でも臓器摘出が可能になるというものです。

ところで脳死の判定に至るまでには、どのような経過をたどるのでしょうか。前橋赤十字病院脳外科・朝倉医師の講演を一部紹介します。

…生前本人が記録した臓器移植承認カードの確認、家族の承諾、脳生理機能の詳細な検査、日赤病院に所属しない医師の参加、臓器コーディネイターと病院全体の職員の協力…が必要でした。これほど厳密にやるのですから、0歳児でも脳死判定は可能だと考えます。

臓器移植法改正案は参院に回りましたが、そのまま可決される保証はありません。衆院解散の時期もからみ、今国会で成立するかどうかまだわかりません。法律改正に至るまで、国民の合意が必要です。

 (院長)

(院長)