2010年
1月1日発行
No.138

    

腰部脊柱管狭窄症

一般的にこの疾患に襲われると、間欠跛行といって歩行の継続が不可能になるものの、一定時間の休息によって再び歩行可能となる症状があります。厚生労働省の統計によると、60歳代で5.6%、70歳代で12.6%の人たちが間欠跛行を自覚し、高齢化とともに更に増加している傾向です。しかしこの症状は末梢動脈疾患でも生じます。このため治療の方針上、この両者を鑑別する必要があります。 

◆間欠跛行の分類

@馬尾型間欠跛行

両側の臀部から下肢後面を通り足底部に至る異常感覚(しびれ、ほてり、もやもや、冷え)や脱力感があります。また陰部付近の異常感覚、残尿感、頻尿、尿閉、便秘なども歩行により引き起こされることがあります。疼痛の訴えはありません。

A神経根型間欠跛行

神経性跛行の中で最も頻度が高い。下肢や臀部の疼痛を主訴とする単根性障害で第5腰神経根障害が多い結果です。

B混合型間欠跛行

馬尾型と神経根型の症状を併せ持つものです。

C血管性間欠跛行

閉塞性動脈硬化症や閉塞性動脈血管などのために末梢動脈疾患が発生し、血流障害を来たし筋肉が動かなくなります。

間欠跛行の内容は民族差や地域差が大きく、正確なデータはないようです。日本のある病院の整形外科の調査によれば、75%は脊柱管狭窄症によるものとなりました。 

◆症状による鑑別診断

@姿勢因子

脊柱管狭窄症の場合、立位のみで悪化し、前屈やしゃがみ込むと軽快します。歩行により悪化するが、自転車では不自由はありません

A下肢動脈の触診

血管性の場合、歩行負荷で初めて下肢症状が出現する。下肢の動脈の各所に触れ、搏動異常を検出することで鑑別できます。 

(院長)