2010年
3月1日発行
No.139

    

腰部脊柱管狭窄症 その3 

   保存治療について

 

まずは下肢のしびれや疼痛、間欠跛行を来たした方には、適当量の消炎鎮痛剤、経口プロスタグランジン誘導体製剤を投与します。これらが無効であった場合、エルシトニン20単位を週に1回筋肉注射すると約2カ月で効果が表れるという報告もあります。この薬効は中枢性鎮痛作用、骨粗鬆症に起因する腰背部痛に対する鎮痛効果と考えられています。

その他にビタミン製剤、抗てんかん薬、抗不安薬、抗うつ薬、リン酸コデイン、漢方薬など様々な薬剤が用いられています。これは脊柱管狭窄症の程度や随伴する症状が患者さんによって異なることが多いからです。

このうち特に重要なプロスタグランジン製剤について、その役割を述べたいと思います。脊柱管狭窄症の症状の発現には神経組織への機械的圧迫と血流障害が考えられることから、血行改善剤であるプロスタグランジンE1製剤が有効であると最近わかってきました。本来は末梢の動脈閉塞症に有効でしたが、各施設の使用経験から脊柱管狭窄症に有効であると判定されました。

一方薬物療法に併用して、理学療法や硬膜外ブロック、神経根ブロックなども有効です。コルセットや理学療法(温熱療法、低周波治療、腰椎牽引等)も有効です。進行性の下肢麻痺や膀胱直腸障害がある場合、長期にわたりコルセットを装着しているとかえって悪化する場合もあるそうです。明らかな腰椎ヘルニアが認められた方でも、安静と理学療法で軽快する場合もあります。ヘルニアには「突出型」「脱出型」「遊離脱出型」の三種類があり、「脱出型」「遊離脱出型」では自然消腿を認めるようです。小さくても軟骨終板や骨組織を含んだものは縮小しないといわれています。椎間板治療では、過去において手術治療が盛んでした。現在では温存治療が優先されていますが、症状が悪化する場合は手術が必要となります。

次回は手術治療に関して述べたいと思います。

 (院長)