2010年
5月1日発行
No.140

    

腰部脊柱管狭窄症 その4 

現在当院に腰痛を訴えて通院している方は70歳以上が多く、投薬や理学療法で対処してきました。数名の方が著しい腰痛や歩行障害を伴うため、整形外科施設で手術を受けています。その方たちは疼痛や歩行障害は改善しており、80歳以上でも手術に耐えられるような時代になりました。 

手術方法のいくつかを提示してみます。

(1)拡大開窓術

脊椎の上関節突起の内部を切除、黄色靭帯の附着部より硬膜までの圧迫部分を除く。

(2)椎弓形成術

椎弓を後方に移動させて脊柱管を拡大する。脊柱管の内部の圧迫部分を除き、椎弓を元に戻す。

(3)脊柱管拡大術

棘突起基部より椎間外側部まで広げ、椎弓の腹側部の黄色靭帯を除去、椎弓を元に戻し、移植骨を用いて固定する。 

(4)棘突起、棘上・棘間靭帯、腰背筋温存手術

棘突起先端部より基部をドリルで縦割りし、左右に開大する。脊柱管内部の圧迫部分を除き左右に分かれた棘突起を縫合し、再建する。

(5)脊椎インストルメーション

高齢者の増加により、脊椎の変形、不安定性骨粗しょう症もあり、除去手術のみでは不充分であるため、金属製器具などを用いて固定する。

患者さんの状態により、これらの様々な方法や工夫された術式が生まれ、応用されています。しかし手術成績については100%の改善が得られることは少ないようです。手術で改善しやすい症状は歩行や立位で生じたり、増強したりするものです。改善しにくい症状は安静時にも常に持続する症状です。とくに安静時のしびれは残存する可能性が高い傾向です。手術後の神経の回復力は病態や個人により差があります。元々変性し変形した腰椎は手術により改善しないのです。これらのことを患者さん自身が充分に考えて決断すべきです。

(院長)