1989年
9月1日発行
No.16

               

     生命と酸素

時々自分勝手にむずかしいことを書きますが、医学も進歩しているし、色々治療にたずさわる開業医としても病気の本態を理解せねばならないのです.私もかって、医学部卒業後5年間、脳の生物学的な働きに少しは関与してみたいと思い、研究に励みました.臨床に転じてから25年を経ています.

私を指導して下さった先生方は今でも地道な研究を続けています.恩師の一人、群馬大学の中野教授が7月28日に主催した活性酸素"に関する研究会に参加しました.

酸素O2、が深く我々の生命に関係していることを少ない紙面ながら説明してみたいと存じます。

酸素が地球上で発生し始めたのは、今から約30億年前とされています。植物の光合成によって大気中に出現した酸素によって、多くの生物が依存して生活をしています.例外的に酸素がない方が都合のよいく嫌気性菌〉などもあります.高等動物では肺によって吸われた酸素O2は赤血球と結合し、他の組織に運ばれます.このように必要な酸素であっても40%を越すと、逆に肺や脳に障害を来たすことになります.生体内で酸素O2が、スーパーオキシドO2、過酸化水素帳H2O2ヒドロオシラジカルH O2、一重項酸素' O2等と変化し活性酸素"として作用する場合があります.生体にはこれを消去する酸素系もありますが、これらが残存すると多くの場合生体に害を与えます。脳で問題となるのは、脳血管障害の発生に、上記の活性酸素の他にフリーラジカルという酸素が関与した毒物が原因となっていることがわかって来ました.脂質が変化を受け過酸化脂質となり、動脈壁に病変を生じさせて行きます.過酸化脂質が分解して細胞内の蛋白質と結合すると老化色素といわれるりポフスチンという物質が蓄積します.これは1842年も前、ハノーバーという人により老人脳の神経細胞中に黄褐色の色素顆粒として発見されました.

これらが神経細胞の機能低下に結びつくことは確かなようです.また高齢者にみられるアルツハイマー型痴呆は過酸化脂質による神経細胞突起終末の変性が関係するのではないかと推定されています

前回書いたパーキンソン氏病においても活性酸素やフリーラジカルが関与しているのではないかと推定されています.その他全身疾患でも多数関与がみられるのですが、省略します.

老化を予防する事は大変むずかしく、我々にとって必要な酸素が逆に害になっていることもあります。現在ビタミンCやビタミンEが抗酸化剤として用いられています。更に有効な手段が発見されることが望まれます。

(院長)