1990年
1月1日発行
No.18

               

     老人性の痴呆について その1

開業して15年目に入り、地域医療にかかわるうちに、当初予想もしなかった多数の老人の方々の健康増進や治療を行って来ました。私自身も年を重ねるうちに、お年寄りに接することが当然のような気持になり、我身にも実感として受け入れられるようになって参りました。

誰でも50代の気力と体力を維持して行きたい希望はあると思われます。しかし運命は苛酷なもので、比較的早い時期に老化がしのびよって来る方もあります。

又平均寿命が伸びるにつれて、健康に老いる方ばかりではなくなって参りました。

日本の全人口に占める65才以上の人達は10年後には15%に達するそうです。私も当然その仲間入りをすることになります。

このところ痴呆性疾患の方々の診療をする機会も増えて参りました。先ずは痴呆にはどんなものがあるのでしょうか?

症状からみると、A)知的能力の喪失B)記憶障害C)@抽象的思考の障害、A判断の障害、B失語(言語障害、言葉で表現する障害)、C失行(間違った行動)D人格変化等が認められて参ります。その他細かく言えば、上記の症状は意識の障害の際にも出現する可能性がありますから、注意する必要があります。

老年期に認められる痴呆性疾患を分類すると学問的にはとても複雑になります。脳の侵される部位により考えると、@皮質性(脳の表面の障害)、A皮質下(脳の表面より内部の障害)、B辺縁性(脳の中心部にある記憶、感情、情動を司る場所の障害)、C髄質性(脳の神経線維の部分の障害)等となります。以下代表的なものについて説明させていただきます。

アルツハイマー病;有名な学者の名に因んでつけられて病名です。40才から60才位で発病する型と、老年期に発病する型があります。特に老年期では脳血管性痴呆と合せて非常に多い疾患です。欧米では前者が多く、日本では後者が多いと言われています。病気の始めは気持がうっとうしくなったりします。そのうち徐々に記憶の障害が目立って来ます。次いで日常の会話が充分に出来なくなり、洗顔、入浴、排便な,どの基本行動が出来なくなります。更にすすめば寝たきりの状態になります。

病気の原因については今の所はっきりしない様です。脳を調べると神経細胞の消失、老人斑等の異常がありますが、これは他の脳の疾患の時にも出現して参ります。

(院長)