1990年
5月1日発行
No.20

               

     老年性痴呆の介護や治療について

前々回お年寄りの痴呆について説明致しました。今回はその対策や治療について述べてみたいと思います。

お年寄りが種々のタイプの痴呆になったとしても、その改善を試みる場合には治療法がそれぞれ異なる訳ではありません。先づ痴呆のお年寄りに対しては、家族や周囲の方々の大きな理解が必要です。@特に精神的な介護が必要で、常に暖かく扱い、なじみの人間関係を維持する。

A心の動きを理解し、説得するよりは、納得してあげること。B時には行動を共にして、間違いなどを強く指摘しないこと。C良い点を認めてあげること。D孤独にさせないで、常に刺激を与えること……等であります。これは痴呆の老人の方々の対処のみならず、一般の老人の方々とお付合いする上でも重要な事柄と言えます。

中には素晴らしく立派な老人も居られ、こんなことを書いてと腹だたしく思われることでしょうが、そのような方々は例外的存在として解釈させていただきます。

痴呆だから又はよくわからないお年寄りだからと言って、安易になってはいけません。よく分り易い言葉や動作などで示して繰り返して印象づけたりして伝えることが重要です。

家庭内の生活でも痴呆のある老人の介助に家族は大変なことでしょうが、いつも話しかけてあげたり、清潔な衣類を着せ、充分な食事をさせてあげることで、痴呆の進行も大分抑制出来ると考えられます。しかし実際にはこれが不可能な家庭もあります。前橋市には未だ施設が不足し、入所不可能な場合が多い様です。スウェーデン程は望みませんが、もう少し拡充されることを望みます。

現代医学は大変進歩いたしました。種々の薬剤が合成され、また開発されました。脳の働きをよくするための薬を私も30年間使用して来ました。しかし結果は製薬会社の説明通りには効かない人々が多く認められました。中には非常に有効であった方も勿論あります。脳そのものに変化が生じてしまった方に、種々の薬を投与して期待をかけすぎたかも知れません。一方確実に言える事は、薬を投与することで体は健康に保たれ、少くとも痴呆の進行を止めることがかなり可能になったことです。更に精神の変調を著しく来たした場合には多種の薬が開発され、極めて有効に作用しています。私が70才になる迄にさらに進歩して欲しいと念じています。

(院長)