1990年
9月1日発行
No.22

               

     過換気症候群

最近、「過換気症候群」と想われる方々が来院し、一緒に来院された方も非常な驚きで、気もどうてんしています。多くの場合救急車で来院していますが、間もなく軽快することが多いものです。落着いて対処すれば来院するまでもなく軽快する方もあるのではないかと考え、書いてみることにしました。

一般に精神的又は身体的ストレス(刺激や負荷のかかること)に基いて、本人の自覚しないまま過剰に呼吸を行うと生ずる病態です。例えば驚き、怒り、興奮などで、知らず知らずに呼吸の回数の増加が生じ、四肢の異常感覚(しびれ等)、脱力感、眼前暗黒感、耳鳴りを伴い、四肢の筋が硬直して動けなくなったりします。スポーツを短時間にがん張りすぎておこなったりする場合にも、突然体が言うことをきかなくなる場合もあるのです。

多くの場合、鎮静剤を与えることで軽快します。来院する前にCO2(炭酸ガス)を吸わせるために、あり合わせの袋を口に当てて呼吸をさせることが有効な場合もあります。

生体は酸素がないと生きては行けませんが、必要以上にO(酸素)をとりすぎると動脈血中のCO2分圧が低下し、脳血管に強い収縮が生じて、脳血流量が減少し、脳機能低下が惹き起こされ、それと共に呼吸性のアルカローシス(血液がアルカリ側に移行すること)が加わる結果であると考えられています。人によっては精神的因子の強い場合もあります。

この時にはこの原因を追及して、取り除く事も予防に対しては重要なことであります。

稀に重症になるとけいれん発作や意識消失を来たすこともあり、けいれん発作を主徴とするてんかん性疾患と鑑別する必要もあります。また時には女性に多いヒステリー性反応もよく似ているために、判定を誤ることもありますが、結局は治療は同じような方針となります。

根本的な脳障害、例えば脳出血や、くも膜下出血、脳梗塞に比して、比較的若い年齢層に発生し、頭痛が軽く、意識障害がほとんどないのが特徴です。手足のしびれや運動障害を訴えても、過換気症候群の人は全く動かないことはなく、四肢筋の軽い硬直と指先の不自由を訴える程度です。呼吸の調節や不安を取ることで改善傾向がみられます。

脳卒中の場合は片側のことが多く、明らかな運動麻痺で、不安症状もなく、症状発現のきっかけが認められないのが普通です。

                               (院長)