1990年
11月1日発行
No.23

               

     救急医療について

9月初旬、救急週間の記念に、前橋市消防隊職員の方々に救急処置と応用に関し、救命率を上ぐるべく講座を依頼されました。この時の要旨を述べると共に、将来の救急医療のあり方などについて考えてみたいと存じます。

一般に、脳疾患、心疾患、代謝性疾患(肝臓病、腎臓病を含みます)の重症状態の時には、意識障害を伴うことが多くなって来ます。初期の手当も無論病状により色々と異なって参ります。

しかし一般的に言って、初期に心肺機能を充分に維持することが、後の治療に大きく関与して来るものです。意識状態が悪いと、舌の根元が緊張を失って、喉の奥に引き込まれてしまいます。このため呼吸が抑制され、場合によっては窒息に至ります。この時には、家族の方々でも早く気付かれて、下顎の骨を頭の方向に引き上げるように支えてやると、いびきをかくような呼吸が比較的平静になります。嘔吐などがあるようでしたら、顔面を横に向け、吐物が気管内に入るのを防ぐようにします。

一方、呼吸をしていない時には、顎の位置は上記の通りで、胸を軽く両手で圧迫し、次いで急に力を抜いて、人工呼吸を行います。介護する人が現場に一人しかいない場合・困難はあるのですが、何はともあれ手をこまねいているより実行される事が先決です。

急性心不全で心停止を来たした場合でも、居合わせた家族などの素早い心臓マッサージで救命出来た例もあります。これは胸の中心にある胸骨部分を1秒間に3〜4回、強くリズミカルに圧迫することで目的を果せます。

救急車が到着すれば、酸素マスクによる人工呼吸、心臓マッサージが続けられます。

最近救命率を上げるために、救急隊員に現在許されていない医療行為、点滴注射、気管内チューブを挿管すること、電気刺激による心臓の除細動装置を使用することが検討されています。

最も良いのは、重症の方の搬送を依頼された場合、熟練した医師と看護婦が直ちに救急車と共に出動することであると思います。

全く理想のことですが、若い医師のヴォランティア活動をシステマチックに運営し、その中で救急隊員の技能の向上をはかり、医師不在の時にでも自在に対応出来るよう画ったらよいのではないかと思います。現段階でも、喉頭鏡、経鼻エアウェイの使用、骨折、止血の応急処置等早急に改善し、効果を上げられる可能性を残しています。

                               (院長)