1991年
3月1日発行
No.25

               

     アルコールによる障害さまざま

アルコールは石器時代の大昔より、我々人類にとって大きな役割を果たして来ました。最近アルコールの消費量が増加し、社会的にも、健康の面からもさまざまな問題を惹き起こしています。社会的には青少年のアルコールにまつわる犯罪も多くなっています。

当医院に直接関係あるのは酒気帯びによる交通事故です。年間何回も不幸な例に遭遇致します。ある時、道路に酔って寝ていて自動車にはねられた方が運ばれて来ました。この方はかなりのアルコール依存症で、以前も私が通りかかった道で、人が倒れているとの通報を受け、泥酔状態のこの方を自宅まで送り届けたことがありました。

残念ながら四肢の骨折と裂断、頭蓋骨骨折などで、即死状態でした。

酒によって惹き起こされる加害者、被害者の立場はどちらも悲惨です。アルコールはこの意味で、我々にとって大敵なのです。

さて、アルコールを少量ないし適量飲んだ場合、胃粘膜を刺激し、消化吸収を助け、動脈硬化の軽減に良いとさえ言われています。また精神的にも快く作用し、疲労やストレス解消に必須なものであります。しかし大量に摂取したり、持続的に長期に過量をとると知らず知らずのうちにさまざまな障害がしのび寄って来ます。大きく分けると内臓障害と精神障害があります。先ず、アルコールはどのようにして吸収されるのでしょうか?一部は胃から大部分は小腸で吸収され、全身に行きわたります。10%位は呼気、尿、汗になって排出されます。残りは分解されて、アルデヒド(一種の毒物で、ホルマリン類似物質)やアセテート(酢酸誘導体)になり、さらに分解されて水と炭酸ガスになり、エネルギーとして利用されるのです。大部分は肝臓で分解されるために飲みすぎると肝臓をこわすことになります。困った事には肝は障害が起きても痛くならないことです。アルコールの分解は肝では主にアルコール脱水素酸素によって行われます。分解過程に於いて他の代謝系に影響を及ぼして、高尿酸血症、高中性脂肪血症などをもたらします。尿酸が多くなると痛風といって手足の関節の激痛を生ずる病気になります。また中性脂肪が蓄積すると脂肪肝になります。これらが引き金になり、さまざまな疾患をひき起こす原因になります。次回はもう少し掘り下げて、説明させていただきたいと思います。

                               (院長)