1992年
5月1日発行
No.32

               

     たばこの話

当院において院内全て禁煙にしてから、五年以上を経ました。蛍光燈や壁、ガラスの汚れが少なくなっています。灰皿は診察室では病歴の置台として用いています。病室では年に数回タバコ好きの患者さんとトラブルを生じますが、決して妥協せず、禁煙を続けています。

タバコの煙は本人だけの害ならまだしも、必ず他人を巻き込み影響が大きいのです。喫煙によって最も起り易いとされている病気に、狭心症や心筋梗塞があります。本数が多くなる程危険率が高くなるそうです。脳卒中では明らかな悪影響は未だ認められないと言われていますが、小生の体験ではヘビースモーカーの人で若いのに拘らず、脳梗塞を生じた方々を治療しております。

喫煙によりHDLコレステロールという善玉コレステロールの低下が生ずることが知られております。又タバコのニコチンの急性作用により一般には血圧は低い傾向であるが、変動が激しい傾向があるそうです。こんなことも脳梗塞の成因に関係あるかも知れません。

肺癌については昔からよく言われていますが、明らかに喫煙者群に多い様ですが、タバコ会社よりは反論が出されております。しかし、やはり手前みそというべきでしょう。私の高校時代の友人がヘビースモーカーであったため、5年前に肺癌のため死亡しております。小生の所を訪れた時にはすでに脳転移による複視(物が二重に見える状態)がありました。他人の吸ったタバコの煙でも肺癌が生じる可能性もあり、タバコ会社の吸いすぎに注意しましょう'ではとても間に合わないことなのです。

日本人の喫煙率は25年前に比して徐々に下っているのは確かなのですが、未だ65%の男性の喫煙率があります。女性は18%位で横バイの状態です。医師は男性では30%位だそうですが、欧米の一般人のレベルであるとのことです。現実に小生の同級生の間では禁煙が非常に滲透し20%以下になっています。総合効果として、禁煙をすることで、死亡確率は大いに減ると言われています。私の父親も80才になってから、眩暈防止のために禁煙し、おかげ様で元気に毎日を過し87才となりました。吸いガラの不始末で火事の発生も非常に多いそうです。青少年の早期の喫煙も成人以上に身心共に弊害が多いと考えられます。街頭の自動販売機が売れ行き不振でなくなるよう、皆さん一生懸命、今後禁煙にふみきりましょう。

(院長)