1992年
7月1日発行
No.33

               

     めまい について

〔その1〕主にメニエル氏病等

一度もメマイ感を経験したことのないと言い切れる人は居ない程、頻繁に生じる症状で、私達の外来にも数多くいらっしゃいます。メマイについて学問的業績は数々とあげられています。その成因については、詳細に解明されています。しかし患者さん一人一人になるとメマイの原因を即座にはっきりさせるのは意外に困難なことなのです。受診される多くの方のメマイは一時的で、来院時にはすでに消失している方が多いのです。色々と問診しても、その状態を完全に把握出来ないことが多いのです。

さて医者の側からの観察ではメマイは大別すると回転性のもの、浮動性のものがあります。前者は文字通り、自分の周囲のもの又は自分自身が回転しているように感じられるものです。後者は立ちくらみや眼前が暗くなったり、ふわっとして足が地にっかない感じであります。

回転するメマイの代表的なものに皆さん誰もがご存知のメニエル氏病があります。これは反復することが多く、一回のみ生じる時には別の成因を考える必要があります。

第二に耳鳴りや難聴などが合併することが多いことです。偉大なるメニエル先生はフランスで、今から130年も前にこの特異な症状を発表しており、それから50年後にシャルコー、バラ二―先生(ノーベル賞受賞)らによって再認識され、一般に知られるようになったのです。

話を元に戻して、これらの先生方によって、メニエル氏病の原因は内耳のリンパ水腫という、リンパ液が異常に内耳にたまり過ぎた状態で発生すると言われています。リンパ液は通常は適当量内耳の中にあって、聴覚や平衡機能に対して重要な働きをしているのです。第三にはメニエル氏病の場合、はっきりした原因がみつけられないことが特徴です。内耳炎、感冒などのウイルス感染症、外傷、薬物の中毒などの後に生じたメマイと区別する必要があります。発生は40〜50才代に多く、ホワイトカラー族によく発生し、神経質な性格の人に精神的疲労、過労などのストレスによって誘発されるそうです。検査としては耳鼻科の先生のもとで聴力テストと併用して、眼振という、異常な眼の動きを観察したり、グリセリンを服用させ、症状の改善を参考にして診断します。治療としては、イソバイドという利尿剤などが有効で、その他様々なメマイ改善剤も用いられます。又出来るだけストレスを避ける生活も必要です。

この病気の将来の状態、予後は比較的よいのですが、くり返し発症する方は難聴に移行する場合もあります。早い時期にしっかり治すことが肝要です。

(院長)