1993年
11月1日発行
No.41

               

     脳の血管内手術について

脳の血管内手術について9月21日休診をして日本脳神経外科学会に参加して来ました。学会は月火水と3日間ありましたが、この間は休日をはさんでおり短時日の出席となりました。私が開業して19年目に入り、脳神経外科の分野は長足の進歩をとげました。最近特に印象づけられたのは微細な操作が増え、診断も各種の複雑な方法を組み合わせ、病変部の実態を明らかに出来るようになったことです。

病変の部位によっては手を出せない場合もあり、また全世界の有能な方々の努力によっても、悪性脳腫瘍の治療成績は私が大学を卒業した頃と基本的にあまり変化していないようです。

一方、脳血管障害の治療は驚く程の進歩です。最近では細い管を四肢の動脈より挿入し、脳血管に誘導し、X線で透視をしたり、ある場合には先端に光を送り血管内部を観察できるようになってきました。群大病院を始めとして群馬県の各所の病院で若い脳外科医が取り組んでいます。

今まで開頭して処置をしていた脳血管障害の治療を、全部ではないのですが、安全に、患者さんに苦痛を与えず治療出来るようになりました。現在狭心症の患者さんに心臓自身を養う冠動脈に細いカテーテル(管)を誘導し、先端部につけた風船のように膨らむ装置によって、狭心症の原因である血管の狭管部を拡張させる方法が普及しています。同様のことが頭の血管でも行われています。場合によっては病変部の血管を閉鎖しなければならない場合があります。

この時には風船の内部に液体を入れ病変部の血管内に留置したりします。さらに色々な細かい操作が将来行える可能性があり、この方面の進歩はこの先10年で非常に大きくなると想像されます。このような血管内部を通して行う操作を血管内手術と総称しています。

薬物を用いた保存療法も今後両輪の如く進歩し、病気になっても後遺症の少ない時代が到来すると考えられます。

(院長)