1994年
11月1日発行
No.47

               

     老年の方々の救急

開業して20年、当時60歳であった方々が、現在は80歳であります。私は60歳、次第に老年の方々の気持ちがわかるようになって参りました。

開業以来受診して下さる方も多く、なかには命をあずけたと言って下さる方もあります。

その方々の何人かが、日常比較的元気に過ごしていたのですが、突然、胸の苦しさを訴えたり、意識障害を来たして救急車で来院しています。

あっという間に亡くなった方々や、更に前橋日赤病院や県立循環器センターに転院された方、私の出来る範囲の治療で妥協して入院を続け、運よく元気に退院された方もあります。

高齢の方々の人口に占める比率が次第に高くなり、救急車で運ばれる人の4人に1人が高齢の方ということです。老年の方々で救急でいらっした方は病気が決して一つだけではなくなかには三つも四つも病気がある場合があり、また個人差が非常にあるのも特徴と言われます。症状も若い人と異なった反応を呈します。肺炎になっても発熱せず、意識障害で発症することもあります。腹痛を訴えながら、心筋梗塞の場合もあり、実際に私も経験しております。心不全でありながら、意識障害で発症する場合もあります。

次に一般的に多いのが、脳血管性病変の発症です。家族の見ている前で、突然意識を失った例や倒れていて誰にも発見されず、5〜6時間を経てようやく発見された場合や家を出てから戻らないため家族が探しに行ったところ、畑や田の中に倒れていた場合などもあります。外出する際にはお年寄りの方は家族に連絡するなどの心掛けが必要です。

今年の猛暑の中で働いていた方で二人ほど、脳出血で運ばれてきました。一人の方は脳出血も比較的少量で、運よく元気になられて歩行して退院しました。もう一人の方は脳の深い所の出血で、呼吸状態が悪いので、日赤病院に転送しました。運悪く今でも寝たきりの状態です。

老人の方は無理して仕事をしない、疲れる前に休み、十分に水分を取る等の心掛けが必要のようです。出血以外に脳の血管が閉塞して意識障害や半身麻痺を生じることも多く、お酒を飲み過ぎ・明け方になり・脱水となり、脳血栓を生ずることがあります。またタバコの吸い過ぎで、脳の血管も痛めることもあります。

第三番目に位するのが、外傷です。転倒によるものです。9割の人が何事もおこらないのですが、残りの1割の人が大腿骨頸部骨折、頭蓋内硬膜下血腫などを生じます。私の所で目立っのは交通事故です。視力や聴覚の低下、目測などのカンの低下により、道路横断中に目動車にはねられる方がよくみられます。自転車やバイク乗車中の事故もあり、夕方暗くなってからは外出を防ぐなどの心掛けが大切です。

(院長)