1987年
10月1日発行
No.5

        緑地や樹木を残しましょう

開院して12年になりました.医院の周辺を見渡すと少しずつ変化しております.市街地も大分近づいて来ました.前橋高校が出来、NTTの建物が遠いながらも高く大きく視野に入ります.

あのような建物が当院のごく近くに立つのはあと何十年後になるのかなと時々想像しています。

子供の頃、現在の日吉町(清王寺町〉で育ったものですから、桂萱小学校付近までよく足を伸ばしました.古い大胡街道の頃で、うねった田の中の道であり、途中に大きな形の良い松が2本

ばかりありました.ここでちょっと休憩したものです.今のNTTの建物のあたりではなかったかと記憶しています。

この辺りの民家は萱ぶきで、周囲は竹やぶや樟の大木などがあり、桃木川の畔には水車小屋もあり、美しいのどかな景色が続きました.田の水路には鮒などの小魚が多く、バケツをすぐ一杯に出来ました.

誤った都市計画か、住民の要求であったか、邪魔ものとされた木は切り倒され、道路は拡張され、川も直線的に土手を作られて変形してしまいました。しかし目を当院の後ろに向ければ、未だ当時の面影ある家並が残っています。数年前玉泉寺の傾斜面に聳えていた樺が、突然切られてしまったのには本当に驚きました.細い1本が残ったのみです.殺生なことをするお坊さんだなと憤慨をしております.

今夏、盆に82歳になる同居の父が、赤城村の生家の寺を訪れたところ、お墓のそばの大木の銀杏が切られていたそうです.子供の頃より想い出ある木がなくなり、非常にがっかりしたそうです.

百年以上を経た木はそれだけで存在価値があるのです.たとえ自分の所有の木であっても、勝手に切らず、後世の遺産として、地域の自然保護のために残したいものです。

(院長)