1995年
5月1日発行
No.50

               

  安全は個人で獲得しなければならないか?

一サリン事件一

前号で阪神大震災を取りあげてから2カ月、今度は地下鉄でサリンという毒物が電車内に置き去りにされ、多数の死傷者が出ました。私の学生時代にはこの種の物質の講義を受けたこともなく、大学院時代も乏しい予算で少量の薬品を用いて実験をしていました。

オウム真理教とサリンとの関係は依然明らかになっていませんが、オウム真理教施設内の大量の薬物の存在には全く驚き腰を抜かしてしまいます。法律を犯していなければ、不正に近い物品の流通を許してしまう、利益が得られれば良しとしてしまう日本の世の中体質にも起因しているようです。個人個人が深く考える必要があるようです。我々は戦後の乱れた時代を経たにも拘らず、他国の不安定な状態を全く他人事と見過しています。

安全という言葉をもう一度、見直す必要がありましょう。

一アレルギー一

話変って、今年はスギの花粉が多いせいか、私の所にも数人の方が訪れています。私自身は小さい頃それほど丈夫な体ではなかったのですが、様々な危険にさらされたためか、アレルギーには無縁です。最近週刊誌で東京医科歯科大学の藤田紘一郎教授が、最近アトピー性皮膚炎や花粉症が多いのは蛆虫症の減少に由来するものだと面白い説を述べていました。蛔虫のおかげで体の中のIGE抗体が産生され、これがアレルギーに対し有効に作用することになります。

東南アジアに旅行して、現地の人は全く症状が出ないのに、日本人は簡単に赤痢、腸チフスなどに感染してしまいます。これも我々が余りに細菌や蛔虫と無縁になり過ぎていたことによるものかも知れません。小さな時、肛門や口から大きな蛆虫が出た経験や、少し古くなった食物により下痢したことも、今の体の安全に寄与していると思われます。

危険と安全は隣合せです。皆様よく考え周囲に注意して行動しましょう。

(院長)