1996年
7月1日発行
No.57

                

   薬害エイズについて

6月2日午後9時より、NHKの薬害エイズ患者最後の証言"を見て、是非この日の強い衝撃的な感銘を記録しておきたいと思いました。

私達はエイズの危険性が知らされた頃、医師会や書物等の情報では異常な性関係や、麻薬などの注射等で感染するとの知識が支配的で、未だ日本にはそれ程エイズ感染者はいないと云うことでした。ところが実際には、この時期多数の感染者が血友病の方たちに発生していたのです。

しかしこれが日本の血友病研究の最先端の学者、製薬会社、厚生省により、秘密がもれない様に、自己保身の方向に行ってしまったようです。証言をされた方々は現在全て亡くなられています。苦しい呼吸をしながら、医者に対する不信、製薬会社、厚生省に対するうらみなどもありました。28歳の息子さんの看病を続け、亡くなった後、自殺された母親の悲しい話もありました。また妻が知らない間に感染しており、夫の死後エイズが原因で亡くなったことを報告された例もあり、非常に根の深い問題があります。最後の患者さんは自分を実験台にして、新薬を験すよう申し出られ、貴重なデータを提供した後亡くなっています。闘病中意識改善した時に後世に残るような公正な裁判が行われるよう訴えていました。

2000名以上の方が感染し、現在5日に1人位が死亡しているそうです。総合病院では高度医療を目指し、血友病以外にも非加熱製剤が投与され、何も知らされず感染してしまった人が多数居られるようです。実際に、血友病の治療をしたことのない医者には、臨床上理解出来ない事も多いのですが、厚生省の薬務行政に原因があるように思えます。

日常の診療においてさまざまな詳細なわけのわからない規制がたくさんありながら、裏でも多数の人命を失う事態が生じているのに唖然としてしまいます。この事件を対岸の火事としないで、日々の診療に患者さんのため、少なくとも悪影響を及ぼさない様な診療を行うよう努めたいと思います。

(院長)