1996年
9月1日発行
No.58

                

   頭痛、脳出血、くも膜下出血について

私の医院に頭痛を訴えて来られる方は非常に多いのですが、歩いて来られる方で、致命的な疾患を有し、緊急的な処置を必要とされる方は多くはありません。また、かなりの頭痛を訴える方でもC.T.スキャンなどで異常がなく、その後投薬で様子をみていて無事なことがほとんどです。

逆に夕刻仕事帰りに寄られ、私が身体的には心配ないと判断し、翌日検査を行ったところ、くも膜下出血であったという方もいます。全く歩行出来ず、嘔吐を伴い、入院経過観察が必要な方で、検査を行っても何らの異常も認められない方もあります。

こんな状況では医師の判断など当てにならないとお考えでしょう。しかし医師の方は出来得る限り、患者さんの症状、経過などを判断して的確な診断を行うように努めているのです。

一般的には高血圧症が以前よりあり、今まで経験したことがないような異和感、強度が強い、ある部位に固定して持続する頭痛には注意を必要とします。また全く頭痛がなくても、半身のしびれ、非常に軽い運動麻痺、わずかに足がもつれる位でも検査してみると出血が認められる場合もあります。

単なる脳出血の場合、多くは薬物治療で、血液は吸収されます。少し大きなものは穿頭術により血液を吸引することも出来ます。放っておくと致命的なものは開頭手術が必要です。

くも膜下出血では多くの場合、脳の血管に出血を来たす血管の異常があります。脳血管撮影を行い、出血原因を確かめます。大部分は脳動脈瘤といって、血管の一部が風船のように膨らみ、それが破れたものですから、これより再出血がないように手術が必要となります。

脳出血の予防のための検査は困難ですが、くも膜下出血を起こし得る血管の異常を発見することは可能です。脳血管撮影を行えば良いのですが、非常に身体的負担がかかります。現在MRI(磁気断層撮影)により、患者さんが苦痛なく脳血管を描出出来るようになりました。私の所でも将来、この問題に対応していきたいと考えています。

(院長)