1997年
1月1日発行
No.60

                

   秋風急なり

先日、元協立病院の院長だった佐藤先生が書かれた本です。これには先生ご自身の、青春から現在までの伝記を含めた社会の一断面が、先生の目で詳細に述べられています。

先生の思想は青春より今まで一貫していて、私などのように、時代によりあちらへよろよろ、こちらへ吹かれたりして主体性のなくなった姿と比すれば、誠に頭の下がる想いです。

先生と私の出会いは17年前、先生が私の医院に脳出血で入院されて以来です。幸いにも少しの身体麻痺がある程度まで改善され、精神的には以前にも増して充実した状態を維持しておられます。この意味でも、私等の大先輩の業績を評価し、尊敬しなければならないと思います。

この本に書かれている相当な部分に病気になられて以降の活動が記され、その行動範囲は日本各地、世界にも及んでいます。小生など開院以来、ほとんど行動は自分の診療所を中心とした範囲で、外国旅行は一度もしていません。

同じ疾患に倒れた患者さんには、是非読んでいただき、今後も意欲をもって、社会のために働けるのだという自信を持っていただきたいと思います。

今新聞紙上を騒がせていることに、厚生省高級役人の特別養護老人ホーム建設に関わる汚職事件があります。先生も富士見村に土地を確保、老人の幸せのために老人ホーム「あかぎ白川園」を建設することを計画しました。しかし役人は何かと邪魔をして、莫大な資金を要するように誘導してあきらめさせました。すると間もなく、村立の特別養護老人ホームが設立されたのです。先生の残念な気持ちが今一層よくわかります。

厚生省トップの役人、県の役人、代議士になりそこなったあやしい人間がグルになって、自己資金ゼロの状態から、百億円以上の金を国や県から引き出したのです。佐藤先生は時の権力と常に真っ向から勝負し、世の中を正そうと努力されました。

今の自民党は国民の大多数が支持していることを良いことに、裏では金や利権にまつわる所業が多すぎます,役人もすっかり染まってしまったようです。

佐藤先生にはこれからも出番が大いにあります。ご活躍を是非お願いしたいと思います。

(院長)