1997年
7月1日発行
No.63

                

   医療制度の変革について

今、日本では大きな赤字をかかえ、このままだと次世代の国民に相当なつけを後回しにしなければなりません。老人がどんどん増加して、若い人が相対的に減って来ます。今後の医療費も増加し、国の経済を破滅させます。従って、これ以上国民総生産の中で医療費を上げないこと、特に老人に対し、無制限の保護をなくし、寿命が伸びなくても仕方がない…このような基本概念を立てて医療制度をどんどん変更するようになりました。

9月より導入される窓口支払いの上昇、特に薬剤費は種類が増加するごとに、段階的に支払いも増加します。また1日分205円を越えない薬代の場合は中味が何種類あっても、一剤とみなすことになりそうです。患者さんには一つ一つの薬の値段などはわかりません。従って錠剤の種類が多くても、負担の少ない場合もあります。患者さんにとっては適正な窓口支払いは常に確実には推定出来ません。当院の受付事務では出来るだけ適正に計算致します。誤差があっても今までの経過からすれば、医院側が損害を被っているケースが多いのです。窓口支払いが増加した分、保険者からは減額して、医院側に支給されます。

次に大きな問題である介護保険の登場があります。医療費を抑制する考えがあるならば、これはむしろ手をつけない方が正しいのではないかとも、思われます。しかし、新たな財源を作るため、公務員の仕事を増やすため、これにからんで政治家の活躍の場が増えることを考えれば、これはやめる訳にはいかないのです。収入のない、生活基盤の侵された老人は是非国で面倒みる必要があります。これに甘えきった人を増やすかもしれないし、また、これを支えるための若い人達の将来の重い負担を考えると将来の見通しは不透明です。

大きな赤字解消のため、医療費ばかりを標的にしないで、役人の数を減らすか、無駄な事業費を減らす等の方向に改革の手を伸ばして欲しいのです。橋本内閣成立時には期待もしたのですが、今は絶望しています。それでも日本の大部の医師は「人は国の資本」と考え、丈夫で長持ちする国民を多くするよう気持ちを改革して、努力を続けていくと思います。

(院長)