1998年
5月1日発行
No.68

                

   医師の仕事には終わりがない

2月にある患者さんから匿名の手紙をいただきました。要旨は、@私が病名を患者さんに伝えず、服薬内容を説明しない。A診療が流れ作業的である。B患者さんが質問をしても返事をしない。C朝10番以内に診察を受けなければ、良い診療は受けられない…等です。ユーモアと受け取れば良いのですが、本気でそう思っておられるとしたら誤解もはなはだしいと考えました。

この紙面で、上記の事は思い当らないこと、また多数の私を信頼して下さる患者さんのために、あえて反論をする事に致しました。@新患の患者さんにはよく説明、投薬内容を省略した事はありません。再診の大多数は診断が確定している方々です。1〜2種類の薬に咬んで含めるような説明は時間の都合上できない場合もあります。単純な頭痛で、確定診断できぬまま十数年を経過している方もあります。A流れ作業の指摘について、創処置、理学療法の患者さんは早めに診察室に入っていただきます。毎日流れ作業をするほどには患者さんは来院していません。そのような現象が出現するとしても、月曜日と土曜日の午前中1〜2時間の間です。

私は常に診療机の前に座ってはいられません。創処置をしたり、検査をしたり、動き廻っていることもあります。この時は対話は少なくなる傾向となります。

B質問をしても返事をしないとありますが、私は自分としてはそのような態度を取った記憶はありません。しかし集中して病歴を書いている時には患者さんの方を向いていない時もあります。受付に診療内容を記載して渡さなければならず、これが意外と時間を取ります。

C1日に10人位で集中力を欠くことは決してありません。ただし遅く来院した場合、希望通りの診療を受けられないこともあります。午後1時頃には午前中の業務は終了するようにしています。また、あまり症状のはっきりしない患者さんには、検査を充分に行わないこともあります。

現在の保険制度では診療費は点数制になっており、一医療機関で突出した診療は行えないことになっています。患者さんにとっては不満の事もありましょうが、ご理解願えれば幸いです。

私の診療は5時に終了するのではありません。救急医療、入院患者もあるため、時にはほとんど睡眠を取らないこともあります6翌日9時には平常通り、診療開始です。個人の生活はかなり犠牲となりました。医者は専門とする科によって働きはそれぞれ異なります。一日中どう働いているかも考慮していただければ幸いです。時間外にも多数の方を診療してきました。一命を取りとめ感謝された場合もあり、不幸な転帰を取った方もあり、想い出はっきません。

(院長)