1988年
2月1日発行
No.7

        意識について その2

前回に引き続いて、硬い話で申し訳ありませんが、さらっと読んでいただければ幸いです。

意識を支える物質が探索されて来ましたが、決定的なものはなく、いくつかのものが複雑に作用していると考えられます。逆に意識を障害する物質は数多く知られています。話がむずかしくなるので、ここでは個々の物質は取り上げません。

睡眠は、ある意味で意識の水準が低下したものに類似した現象と考えられます。そこで睡眠中の脳内での物質の代謝(うつり変わり)について調べが進みました.

睡眠時、セロトニンという物質が間脳に高い値を示すことがわかったり、ノルアドレナリンという強心作用を示す物質の代謝を亢進する時期が認められたりしました。その他細胞の重要な成分である核酸の一つであるウリジンや生体の活性物質の一つであるプロスタグランディンの関与も知られて来ました。

意識ということを、前回述べたように物事を認識するという立場から考えれば、大脳の皮質(表面の脳組織)まで関与してきます。覚醒している状態のみを強調して考えれば、さらに深部の組織で、専門的にいうと大脳辺縁系、基底核、間脳、脳幹等の機能が密接に関連してきます。

図のように覚醒系では中脳網様体がつかさどり、視床下部の後部も含まれています.これを刺激すると目覚めるわけです.

睡眠系は延髄網様体が係わって来ます.これも未だ仮説の段階ですが、これからも興味のあることがたくさん発見されて、将来は意識障害を治療するために、大いに役立つ方向に進歩すると考えられます.

(院長)