1999年
3月1日発行
No.73

          

入浴中の脳卒中

今年のインフルエンザはお年寄りに大変な被害をもたらしました。私の患者さんでも、幾人かのお年寄りが死亡しないまでも大きな影響を受けました。結局、老化している体に異常な高熱、酸素不足などが大きな影響を与えたと考えられます。

同じような原因と考えられる高齢者の方々の入浴中の突然死も増加していると言われています。まず最も影響を受けやすい血圧について述べてみましょう。

脱衣場などが寒いと血圧は一時的に上昇します。150/80位に通常上がるそうです。入浴後、比較的早く約10分間で、全身の血管拡張により血圧は120/80位に低下するそうです。血圧の高い人はこの値より更に高くなり、入浴直後に脳出血となり、しばらくして血圧が低下した場合脳梗塞や心筋梗塞になる可能性があります。風呂場でのメマイ感、立ちくらみには注意を要します。

今から30年以上前は風呂場での発病が、特に冬期に多いと言われました。近年は住宅環境の改善により脳卒中は減少しつつあると言えますが、なお日本全体では風呂場の事故死が10,000件もあるそうです。

浴槽に長くつかると、水温が43℃を越す場合20分で体温が2℃上昇するそうです。これに伴って、発汗などによって体の水分が失われます。血液も水分も減少し、血液の粘度が増加します。これにより血液がかたまりやすくなります。このため脳の血管が閉塞し、脳梗塞に移行する結果となります。さて、予防をするにはどうしたらよいでしょうか?

@脱衣場や風呂場の温度を冬期には寒くないように上げておくこと

A高齢者は水分を失った事に気づきにくいので、意識して水分を補給すること

B高温の湯に入らないこと

Cたとえ低温でも長湯をしないこと

D居眠りをしないこと。血液があたためられて脳に達することで、脳も高温になり、変調を来たすと言われています。

E居間から離れた浴室の場合、高齢者は一人で入浴しないこと、などです。

(院長)