2000年
5月1日発行
No.80
介護保険導入に当って

 4月1日、いよいよ期待と不安の混じった介護保険が導入されることになりました。私の所にも65歳以上の人に支給される介護保険証が届きました。当医院に受診している患者さんのなかにも多数の方々がこの保険証があればいつでも介護が受けられるものと誤解しているようですがこれはあくまでも障害を有して自立が不可能になって初めて活用できる保険なのです。
 当医院にも90歳を越えて自立されている方がいますが、介護保険が導入されても、保険料のみ年金から天引きされ、市役所からは何一つ連絡がないと不満顔に述べています。また、障害を持った多数の方々が、当然介護認定を受ける資格がありながら、いろいろな施設の利用や制度を受けるのを毛嫌いしてそのまま放置しています。そのような方々を私は出来るだけ説得して、認定を受けるよう勧めていくつもりです。
 本来は市の方でも指導をするべきなのでしょうが、現在は認定作業と種々の制度の認定を受けた方々がどのように利用できるか検討するケアプラン作成などに追われていて、手が回らないものと考えられます。
 数年間は混乱するのではないかと考えられます。当医院では直接介護保険に関わる作業やサービス事業は行っていませんが、患者さんからの相談があれば、より良い介護を受けられるよう考えていきたいと思っています。
 私がふと疑問に思うのは,この介護保険に何兆円ものお金をかけ、多方面で多くの方々が、多大なエネルギーを注いでいます。この金とエネルギーが今まで何故予防医学に注がれなかっ たのかということです。保険診療では予防的治療は厳禁されていますが、小渕総理大臣が脳梗塞で再起不能になったことを考 えると、この医学が進歩した時代、一国の首相の健康管理も出 来なかったのは大きな矛盾です。有為な人材が失われないよう、介護される人を減らすような予防的治療医学にこそ、これから厚生省は取り組むべきであると思います。
                                  (院長)