2001年
5月1日発行
No.86
医療不信と情報開示について

 昨今、新聞や雑誌で医療事故や誤診など、医療の諸問題が数多く登場します。文藝春秋4月号では特集記事が組まれました。
 現在いろいろな分野で情報開示をするような社会の仕組みが急がれています。医療の面でもこの方向で進んでいますが、早急にすべての面で行うにはなかなか困難がつきまといます。これが医療不信となって爆発しているようです。
 私たち診療所の医師も、このような状況を考え、情報開示に備えようと準備はしていますが、すべての面においては困難な状況です。日常の診療においては、開院以来一人ひとりの患者さんに出来るだけ時間を割いて接して来ました。そして私の出来る最良の医療を行ってきたつもりです。しかしこれからは過去に溯って全ての状況を記録で表現しなければならなくなります。それには診療システムを全面的に変えなければなりません。今まで、患者さんに注いでいたエネルギーを分散して、記録に専念しなければなりません。その記録を全て電子媒体、例えば光ディスクに保存しておく方法が検討されています。
 私自身は未だ取り組んでいませんが、前橋市内の先進的な若い先生は日常にこの方法を取り入れて診療しています。
 患者さんの状態を克明に観察・記録し、これを正しい診断と治療に結びつける事は患者さんの信頼を得ることが出来るし、よい結果をもたらすと予想されます。しかし、今のところ費用と人手がかかるので、簡単な良い方法が導入されるまで見送るつもりです。
 患者さんに納得のいく治療をしたいと願っても、国は過剰診療を防ぐためにいろいろと沢山の制限項目を設けています。このために一部の患者さんには診断や治療の遅れが出てきて、これが医療ミスとして追及されることもあります。医師は全て、患者さんの事を考えて診療していますが、数字などとは異なり、予想通りの経過を得られないこともあります。患者さんとの話し合いで、理解を深めていただけたらと願っています。

(院長)