2003年
7月1日発行
No.99
排尿障害について

 多くの老人の方々に接すると、食事や排便がいかに大きな問題であるかがわかります。しかし便秘のことは比較的楽に医師に申し出てくれますが、排尿障害については相談される頻度も少なくなってまいります。特に女性では、相談を受けたことがほとんどありません。
 二十年以上前、定年退職した看護婦さんの相談を受けて群大病院に紹介しましたが、その時は適切な治療方法がなく、保存治療に終始しました。3ページの健康講話に「女性の尿失禁」について記載してありますので、参考にして下さい。
 女性の排尿障害は、直接生命に危険を及ぼすことは少ないのですが、男性では一転して、さまざまな問題を生じます。
 過去に私が脳疾患で治療した患者さんで、最終的に前立腺癌で亡くなった方が何人もありました。また、私の父親も膀胱癌になり、手術や抗癌剤治療を行いましたが、最後まで排尿障害で苦しみました。
 男性は、老化に伴って前立腺が肥大傾向になります。前立腺肥大は超音波診断などで確認出来ます。
 前立腺肥大は数種の薬物などでかなり改善されます。しかし中には運悪く前立腺癌が混在しています。血液検査(PSA)でかなり高率で癌の診断が可能になり、治療効果の判定に有用となってまいりました。早期発見で、天皇陛下が手術治療を行い、その後お元気で活動されているのは皆さん、ご存じの通りです。
 現在、手術治療と保存薬物治療がありますが、年齢や体の状態、病変部の変化などで、治療方法が選ばれます。
 前立腺癌は放置しておくと、血液を介して全身に転移することがあります。腰痛は老化に伴う疾患ですが、癌が腰椎に転移し、腰の痛みを訴えて受診した患者さんから癌が発見されることもあります。
 いずれにせよ、以前と比べて治療も格段に進歩しています。気になることがあったら、相談されますようお願いいたします。
(院長)