日耳鼻発 第57号
平成14年4月20日
社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
理事長 小松崎 篤

ENT FAX

 インフルエンザ患者に対する解熱鎮痛剤等の慎重な使用について、厚生労働省医薬局安全対策課長より特に耳鼻咽喉科医に対する下記の協力要請がありました。よろしくご高配、ご注意くださいますようお知らせいたします。



日本耳鼻咽喉科学会理事長 殿

厚生生労働省医薬局安全対策課長

インフルエンザ流行期における解熱鎮痛剤等の慎重な使用について

医薬品、医療機器等の安全対策につきましては、平素よりご協力いただき有り難うございます。
 これまで当課では、サリチル酸系解熱鎮痛薬を配合した総合感冒薬について、昨年6月発行「医薬品・医療用具等安全性情報No.167」において医薬関係者の方々へインフルエンザ流行期等における慎重な使用を呼びかけているところです。また、ジクロフェナクナトリウム製剤、メフェナム酸製剤こつきましては、昨年5月にそれぞれ日本医師会を通じて、小児のインフルエンザへの投与は避けていただくよう、医療機関の先生方のご協力をお願いして参りました。
 本年2月に入り、厚生労働省へ報告されたインフルエンザ脳症による死亡例において、患者さんが最初に受診した耳鼻咽喉科医院で処方された医薬品に、サリチル酸系解熱鎮痛剤を配合した総合感冒薬、ジクロフェナクナトリウム製剤、メフェナム酸製剤の3剤が含まれていたという事例がありました。
 また、家庭に残っていたジクロフェナクナトリウム製剤を、医療機関を受診する前に自己判断で使用していた事例もありました。
 これらのインフルエンザ脳症による予後不良例と、薬剤との関連性は不明ではありますが、これまでの諸処置にもかかわらずこのような事例の報告があることは、当該医薬品の使用上の注意事項についてあらためて注意を喚起する必要があるものと考えております。
 以上をふまえ、インフルエンザ流行期における解熱鎮痛剤等の安全な使用に関して、別添をご参考として、貴会会員への周知について一層のご協力をお願い申し上げます。


 
 (別添)

 耳鼻咽喉科領域で解熱鎮痛剤等を使用するに際し、インフルエンザ流行期にあっては、患者のインフルエンザ感染の可能性に十分留意し、以下の医薬品の小児に対する慎重な使用にご配慮願います。
 
1.サリチル酸系医薬品

  1. 平成10年12月、アスピリン、アスピリン・アスコルビン酸、アスピリン・ダイアルミネート、サリチル酸ナトリウム、サザビリン、サリチルアミド及びエテンザミドについて、15歳未満の水痘、インフルエンザの患者に投与しないことを原則とする使用上の注意等の改訂を指示し、注意喚起を行った。
  2. 平成13年6月、医薬品・医療用具等安全情報No.167により、特にサリチル酸系医薬品を配合する総合感冒薬に対して、インフルエンザ流行期における慎重な使用を重ねて呼びかけた。
     

2.ジクロフェナクナトリウム

  1. 平成12年11月、インフルエンザ脳炎・脳症の臨床疫学的研究及び病理所見、ならびにジクロフェナクナトリウムの薬理作用から、インフルエンザ脳炎・脳症を悪化させる恐れがある旨を、緊急安全性情報により注意喚起を行った。
  2. 平成13年5月、ジクロフェナクナトリウムについてもサリチル酸系医薬品と同様に、15歳未満の水痘、インフルエンザの患者に投与しないことを原則とする使用上の注意等の改訂を指示し、注意喚起を行った。
    アナバン坐剤、ドセル錠、ボルタレン坐剤

3.メフェナム酸

 平成13年6月、薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会における日本小児科学会、研究者等の意見をふまえ、「小児のインフルエンザにともなう発熱に対して基本的に投与しない」旨が合音され、同年6月、使用上の注意等の改訂を指示し、注意喚起を行った。
ポンタールシロップ