耳の病気
中耳炎とは
耳の構造
耳は外耳、中耳、内耳に分けることができます。外耳には耳介と外耳道があります。外耳道の奥に鼓膜があり、その内側が中耳になります。中耳は鼓膜と骨に囲まれた空気の入った空間であり、耳管という細い管により鼻の奥とつながっています。中耳のさらに奥に は内耳があります。内耳には蝸牛と半規管・前庭がありそれぞれ聴覚と平衡感覚の感覚器官があります。
中耳炎の種類
- 急性中耳炎 鼻やのどから細菌が耳管を通って中耳に入り炎症を起こします。急に熱がでたり耳が痛くなったりします。
- 滲出性中耳炎 中耳内に周囲の組織からしみ出した水分が貯まる病気です。発熱や痛みはなく軽度から中等度の難聴をおこします。
- 慢性中耳炎 急性中耳炎や滲出性中耳炎が治りきらないと、鼓膜に穴があいた状態が続くことがあります。慢性中耳炎であり耳だれと難聴が主な自覚症状となります。
急性中耳炎
風邪に引き続いておこることが多く、最も数の多い中耳炎です。5〜6歳までの子供にしばしば見られます。この理由は子供は風邪にかかり易いことだけでなく、子供の耳管は大人に比べて太くて短く、水平に近いため鼻やのどの細菌が中耳に入り易いためです。
- 症状
- 発熱:小児では38度くらいの熱がでます。大人では熱の出ないこともあります。
- 耳の痛み:強い耳の痛みがあります。夜、お子さんが耳の痛みが強く眠れないようなときにはまず急性中耳炎を疑います。しかし小さいお子さんは痛みを訴えることができませ ん。機嫌が悪いぐずる、耳に手をやるなどの様子に注意します。
- 耳だれ:炎症が強くなると中耳に膿がたまり鼓膜を破って外耳道に出てくることがあります。
- 難聴:年長児、大人では聞こえにくい、耳のつまった感じがあります。
- 治療
- 薬物治療 中耳炎は細菌が中耳内で増殖し炎症をおこす病気ですから、細菌を殺す抗生物質を使います。抗生物質は内服することが多いですが、点耳といい直接に外耳道につけることもあります。重症のときには抗生物質を注射します。耳の痛みや熱が高いときには解熱鎮痛剤を使って症状をやわらげてあげます。
- 鼓膜切開 中耳内に膿がたまっているときには鼓膜をメスで切って膿を外に出します。膿が出てしまうと耳の痛みは軽くなり、熱も下がります。あいた鼓膜の穴は耳だれが止まれば数日で閉じます。
- 薬の治療や鼓膜切開によって、急性中耳炎の熱と耳の痛みは1〜2日で良くなります。 しかし中耳の炎症はまだ残っており、途中で治療をやめてしまうと滲出性中耳炎や慢性中耳炎に移行してしまうことがあります。症状がなくなっても、炎症が完全にとれるまで治療を続けることが大切です。
滲出性中耳炎
本来、空気がはいっている中耳内に水分が貯まる病気です。このため鼓膜の振動が悪くなり音が伝わらなくなり難聴をおこします。急性中耳炎と違って耳の痛みや発熱はなく難聴が唯一の症状です。急性中耳炎を放置したり、治りきらないと滲出性中耳炎に移行します。またアデノイド、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などで耳管から中耳への空気の出入り がうまく行かないときにもこの病気はおこります。
- 症状
- 軽度から中等度の難聴が主な症状です。小さなお子さんは自分では難聴を訴えないので、呼んでも返事をしない、聞き返す、テレビの音が大きいなどの症状に注意します。
- 治療
- 耳管通気 耳管通気といって金属の管やゴム球を使い空気を耳管から中耳に送り込む 治療を行います。同時に、中耳に細菌が入らないように鼻やのどの治療を行います。抗生物質、消炎酵素剤などのくすりを飲んで耳や鼻、のどの炎症を押さえることもあります。
- 鼓膜切開 難聴が重かったり耳管通気をしばらく続けても改善しない場合には、鼓膜切 開を行って中耳にたまった水を抜きます。
- 換気チューブ 鼓膜切開を行ってもくり返し水がたまってしまう場合には、換気チュー ブを入れます。シリコン製の小さなチューブを鼓膜を切開した穴に挿入し、人工的に鼓膜 に穴のあいた状態をつくり中耳の換気を改善させます。チューブは小さいので聞こえには 影響なく聴力は良くなります。
- アデノイド切除 アデノイドは鼻の奥にある扁桃腺の組織です。これ肥大すると耳管の 出口を圧迫して滲出性中耳炎の原因となります。このようなときにはアデノイド切除の手 術を行います。
- 滲出性中耳炎は慢性の病気で治療には時間がかかり、また一度治ったと思っても風邪をきっかけに再発することがあります。滲出性中耳炎を悪化させると癒着性中耳炎、真珠腫性中耳炎という難治性の慢性中耳炎に移行することがあります。滲出性中耳炎のお子さんには定期的な治療と経過の観察が大切であり、それによって良い聞こえを保つことができるのです。
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