脳死と臓器移植
臓器別 移植希望者適応ならびに選択基準

 移植医療の原則は1)移植でしか治療しえない末期的病状でありながら,2)その臓器さえ代替す れば健康を回復しうる全身状況で,かつ全身性あるいは他臓器に致死的もしくは再発しうる病状を有さず,3)本人ならびに家族が 移植の必要性を十分に理解し,術後の免疫抑制療法や生活制限を遵守しうるだけの積極性と心理的な安定性を有しているということ である.

A-1 心臓移植希望者(レシピエント)適応基準
A-2 心臓移植希望者(レシピエント)選択基準
B-1 肺移植希望者(レシピエント)適応基準
B-2 肺移植希望者(レシピエント)選択基準
C-1 肝臓移植希望者(レシピエント)適応基準
C-2 肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準
D-1 腎臓移植希望者(レシピエント)適応基準
D-2 腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準
E-1 膵臓移植希望者(レシピエント)適応基準
E-2 膵臓移植希望者(レシピエント)選択基準
F  小腸移植希望者(レシピエント)選択基準

A-1 心臓移植希望者(レシピエント)適応基準

  1. 適応疾患
    1)拡張型心筋症,および拡張相肥大型心筋症
    2)虚血性心筋疾患
    3)その他(日本循環器学会および日本小児循環器学会の心臓移植適応検討会で承認する心臓疾患)
  2. 適応条件
    1)不治の末期的状態にあり,以下のいずれかの条件を満たす場合
     a)長期間または繰り返し入院治療を必要とする心不全
     b)?遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA3度ないし4度から改善しない心不全
     c)現存するいかなる治療法でも無効な致死的重症不整脈を有する症例
    2)年齢は60歳未満が望ましい
    3)本人および家族の心臓移植に対する十分な理解と協力が得られること
  3. 除外条件
     A)絶対的除外条件
      1)肝臓,腎臓の不可逆的機能障害
      2)活動性感染症(サイトメガロウイルス感染症を含む)
      3)肺高血圧症(肺血管抵抗が血管拡張薬を使用しても6wood単位以上)
      4)薬物依存症(アルコール性心筋症を含む)
      5)悪性腫瘍
      6)HIV(Human Immunodeficiency Virus)抗体陽性
     B)相対的除外条件
      1)腎機能障害,肝機能障害
      2)活動性消化性潰瘍
      3)インスリン依存性糖尿病
      4)精神神経症
      5)肺梗塞症の既往,肺血管閉塞病変
      6)膠原病などの全身性疾患
  4. 適応の決定
     各施設内検討会および日本循環器学会心臓移植適応検討会の2段階審査を経て公式に適応を決定する.適応決定後, 本人および家族にインフォームド・コンセントを経て,移植患者待機リストに載った者を心臓移植の対象とする.

A-2 心臓移植希望者(レシピエント)選択基準

  1. 適合条件
    1)ABO式血液型
     一致だけでなく適合も考慮する
    2)体重
     体重差は−20〜+30%とする
    3)前感作抗体
     ダイレクトクロスマッチが陰性であることを確認する.
    4)CMV抗体
     CMV抗体陰性レシピエントにはCMV抗体陰性ドナーが望ましい.
    5)HLA型
     選択基準にはしないが必ず検査・登録する.
  2. 優先順位 以下の順に勘案して決定する.
    1)虚血許容時間
     摘出から4時間以内に血流再開することを第一条件とする.
    2)医学的緊急度
     Status 1:補助心臓,IABP,人工呼吸,カテコラミン持続静注が必要な状態
     Status 2:待機中の患者で上記以外の状態
     Status 3:除外条件(感染症等)にて一時的に選択対象から外れた状態
    3)ABO式血液型
     一致を原則とするが適合者への配分も考慮する.
    4)待機期間
     Status1レシピエント間では待機期間はStatus1の延べ日数,Status2では待機期間は登録日からの延べ日数

B-1 肺移植希望者(レシピエント)適応基準

  1. 適応指針
    1)治療に反応しない慢性進行性肺疾患で,肺移植以外に救命の有効な手段がない
    2)移植を行わなければ残存余命が限定されると判断される
    3)年齢が心肺移植の場合45歳未満,両肺移植の場合55歳未満,片肺移植の場合には60歳未満である.
    4)本人が精神的に安定しており,移植医療の必要性を認識し,これに対し積極的態度を示すとともに,家族および患者を とりまく環境に十分な協力体制が期待できる.
    5)レシピエントが移植手術後の定期検査と,それに基づく免疫抑制療法の必要性を理解でき,心理学的・身体的に十分耐 えられる.
  2. 適応疾患
    1)原発性肺高血圧症
    2)特発性肺線維症
    3)肺気腫
    4)気管支拡張症
    5)肺サルコイドーシス
    6)肺リンパ脈管筋腫症
    7)アイゼンメンジャー症候群
    8)その他,肺・心肺移植関連学会協議会で承認する進行性肺疾患
  3. 除外条件
    1)肺外に活動性の感染巣が存在する
    2)他の重要臓器に進行した不可逆性障害が存在する.
     悪性腫瘍,骨髄疾患,冠動脈疾患,高度胸郭変形症,筋・神経疾患,肝疾患(T-bil>2.5mg/dl)腎疾患(Cr>1.5mg/dl, Ccr<50ml/min)
    3)極めて悪化した栄養状態
    4)最近まで喫煙していた症例
    5)極端な肥満
    6)リハビリテーションが行えない,またはその能力が期待できない症例
    7)精神社会生活上に重要な障害の存在
    8)アルコールを含む薬物依存症の存在
    9)本人および家族の理解と協力が得られない
    10)有効な治療法のない各種出血性疾患および凝固能異常
    11)胸膜に広範な癒着や瘢痕の存在
    12)HIV(human immunodeficiency virus)抗体陽性
  4. 肺・心肺移植の自己管理体制
     以下の時点で肺・心肺移植関連学会協議会に報告する義務を負う.
    1)適応決定
    2)移植の実施
    3)定期的follow up

B-2 肺移植希望者(レシピエント)選択基準

  1. 適合条件
    1)ABO式血液型
     一致だけでなく適合も考慮する
    2)肺の大きさ
     ドナー予測肺活量/レシピエント予測肺活量
    ×100(%)
     片肺移植では90〜130%
     両肺移植では80〜100%
    3)前感作抗体
     ダイレクトクロスマッチが陰性であることを確認する.
    4)CMV抗体
     CMV抗体陰性レシピエントにはCMV抗体陰性ドナーが望ましい.
    5)HLA型
     選択基準にはしないが必ず検査・登録する.
  2. 優先順位 以下の順に勘案して決定する.
    1)虚血許容時間
     摘出から8時間以内に血流再開することを第一条件とする.
    2)ABO式血液型
     一致する者を適合者より優先する.
    3)待機期間
     待機期間の長い者を優先する.

C-1 肝臓移植希望者(レシピエント)適応基準

  1. 適応条件
     不治の末期的状態にあり従来の治療法では原則として余命1年以内と予想されること
  2. 年齢は60歳未満が望ましい.
  3. 適応疾患
    1)劇症肝炎
    2)原発性胆汁性肝硬変
    3)肝硬変症
    4)その他日本肝臓病学会移植検討委員会で承認する肝・胆道疾患
     (原則として当面非ウイルス性,非アルコール性肝疾患が優先される)
  4. 絶対的除外条件
    1)他の主要臓器の進行した不可逆性障害
    2)全身・多臓器の活動性感染症(サイトメガロウイルス感染症も含む)
    3)他臓器の悪性腫瘍
    4)アルコールを含む薬物依存症
    5)HIV抗体陽性
    6)肺内の右→左シャントによる強い低酸素血症
     (肝臓に関する絶対的除外については他日本肝臓病学会移植検討委員会において決定すること)
  5. 本人・家族の理解と協力
     本人および家族の移植に関する十分な理解と協力が得られること
  6. 判定の手続き
     内科系の関係学会認定専門医・指導医が外科系の関係学会認定専門医と協議の上決定すること

C-2 肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準

  1. 適合条件
    1)ABO式血液型
     一致だけでなく適合も考慮する
    2)前感作抗体
     選択基準にはしないが必ず検査・登録する.
    3)HLA型
     選択基準にはしないが必ず検査・登録する.
    4)虚血許容時間
     摘出から12時間以内に血流再開できること.
  2. 優先順位 以下に従い合計点数の高い順とする.同点の場合待機期間の長い者を優先する.
    1)肝臓移植対象疾患
    I群 劇症肝炎
    胆道閉鎖症
    先天性代謝異常症
    Budd-Chiari症候群
    原発性胆汁性肝硬変
    二次性胆汁性肝硬変
    原発性硬化性胆管炎
    20点
    II群 C型ウイルス性肝硬変
    (細小肝癌を含む)
    B型ウイルス性肝硬変
    (細小肝癌を含む)
    10点
    III群 アルコール性肝硬変 5点

    2)医学的緊急性
    予測余命が1ヶ月以内 9点
    予測余命が1ヶ月〜6ヶ月 6点
    予測余命が6ヶ月〜1年以内 3点
    予測余命が1年を越えるもの 1点

    3)ABO式血液型
     一致:1.5点
     適合:1.0点

D-1 腎臓移植希望者(レシピエント)適応基準

 末期腎不全が対象となるが,原疾患に関し原則として腎臓移植の絶対的禁忌はない.

D-2 腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準

  1. ABO式血液型の一致
  2. HLA型の適合度
     DR座の適合とA座およびB座の適合度で順位を定める.
     HLA型の取り扱いの詳細については運用細則に従う.
  3. HLA型の適合度順位が同一の場合待機期間の長い者を優先する.
  4. リンパ球直接交差試験(全リンパ球またはTリンパ球)陰性

E-1 膵臓移植希望者(レシピエント)適応基準

  1. 膵腎同時移植の場合
    1)内因性インスリン分泌の欠如する者(インスリン依存性糖尿病患者または膵全摘患者)で,かつ
    2)末期糖尿病腎症のために透析中である者,または透析導入のガイドラインを満たす者.
  2. 腎移植後の膵単独移植の場合
     内因性インスリン分泌の欠如する者(インスリン依存性糖尿病患者または膵全摘患者)
  3. 禁忌
    1)重篤な活動性感染症
    2)悪性腫瘍(再発のない根治術後患者は除く)
    3)腎以外にも重篤な疾患
     重度虚血性心疾患,重症心不全,不可逆性肝機能障害
    4)糖尿病に特異的な合併症
     進行性の壊疽,特に壊疽のために患肢の切断術を受けている者
     重度脳血管障害
     高度末梢神経障害
     活動性の前増殖性網膜症

E-2 膵臓移植希望者(レシピエント)選択基準

  1. ABO式血液型
     一致だけでなく適合も考慮する
  2. HLA型の適合度
     DR座の適合とA座およびB座の適合度で順位を定める(腎移植での順位と同一).
  3. 1,2の優先度が同一の場合,膵腎同時移植,腎移植後膵移植,膵単独移植の順に優先する.
  4. 1,2,3が同一の場合,待機期間の長い者を優先する.
  5. リンパ球直接交差試験(全リンパ球またはTリンパ球)陰性

F.小腸移植希望者(レシピエント)選択基準

  1. 適合条件
    1)ABO式血液型
     一致だけでなく適合も考慮する
    2)搬送時間
     摘出から血流再開まで12時間以内で行えること.
    3)基礎疾患
     良性疾患であること.
    4)CMV抗体
     CMV抗体陰性レシピエントにはCMV抗体陰性ドナーであること.
    5)前感作抗体およびHLA型
     選択基準にはしないが必ず検査・登録する.
  2. 優先順位 以下の順に勘案して決定する.
    1)医学的緊急度
     Status 1:中心静脈栄養法の維持が不可能になった状態
     Status 2:血清ビリルビン値の高値持続と,肝臓障害が進行しつつある状態
     Status 3:中心静脈栄養法の維持が不可能になりつつある状態
    2)ABO式血液型
     1)が同一の場合,一致を優先する.
    3)待機期間
     1)2)が同一の場合,待機期間の長い者を優先する.

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