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電子カルテが医療を変える 里村洋一編    

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 私は皆様と相談しながら診療する最良の方法として診療内容
が理解し易い電子カルテを使っています。
 診療情報の公開・開示を信念として診療しております。
電子カルテは近頃は皆様に大変身近なものになっています。
 自覚症状・身体所見などを画面に表示します。
 英語・ドイツ語・専門用語でカルテで書くのと異なり分かりやすい
日本語で画面に記載しますので診療内容が良く分かります。
 治療方法についても皆様とご相談し最もよい方法を選びます。
 生活習慣についてのご注意なども画面で説明いたします。
 治療経過をグラフで表示しますので治療経過が一目で分かります。
 平成12年(2000年)4月より電子カルテDynamicsを使っています。
 大分古い話ですが私の経験を群馬県医師会報平成13年10月号
へ投稿致しました。
 ここに私の診療診についての信念を記載しました。
 以下全文を載せました。
 ご笑読戴ければ幸 甚です。
 2009年(平成21年)5月10日一部訂正 註:参照

聴診器と電子カルテ    聴診器シリーズ
            前橋市医師会  瀬田勝之
「良い医師は聴診器を通して病変だけでなく患者の心を聞いていた」
(多田富雄著 「ビルマの鳥の木」より引用)
 聴診器は19世紀初頭より使われている歴史ある診察器具ですが
最新の医療機器が使われている現在の医療 現場でも多くの医師に
愛用されています。
 自動血圧計という便利なものがありますが、私は患者さんの血圧は
必ず自分で測ります。

註:水銀血圧計が製造禁止となりました。
 近い将来使用も禁止なります。又自動血圧計の精度も上がりました
 ので今はこれをを使っています。

 カフを巻く時に 患者さんに直接触れることで皮膚の具合や脈の打ち
方、聴診器を当てながら見る患者さんの表情などから身体 の状態、ま
たそのあいだの何気ない会話などから患者さんの精神状態なども一緒
に分かり患者さんとの間に信 頼関係が増すと考えているからです。

 また、患者さんに直接カルテを見てもらい診療の経過などを理解して
戴くことも信頼関係を増す上で役立つ のではないかと考え電子カルテ
での診療内容の開示・公開を昨年(2000年)8月より始めました。

 カルテは医療関係者の情報伝達手段だけでなくましてや医師のメモ帳
的存在などではありません。カルテは 患者さん個人並びに保険者にそ
の行われた医療の内容を説明する資料です。
又、近年診療内容の開示と公開が 医療側に要求されておりそれに
応えるための資料でもあります。

 近頃、電子カルテという言葉や記事がしばしばマスコミや医学雑誌に取
り上げられています。
この背景には コンピューターを使う医師の増加及びこれら機器の高性能化
と価格の低廉化という技術的側面と国民の医療情 報開示・公開要求
への対応や医療費抑制などに電子カルテが役立つのではないか考えられ
ている社会的側面が あります。

 電子カルテには欠点もありますが紙カルテでは出来ない多くの利点もあ
 ります。
1. 記録様式の標準化。表現が紙カルテでは英語、ドイツ語、日本語、
符丁などが混在しまた医師個人の筆跡 にくせがあり記入者にしか読めな
いことが多いですが日本語入力の電子カルテなら誰でも読めます。
 紙カルテにも電子カルテにも共通することですが、標準化された医学用語、
検査名、病名で記載すればカルテ の記録が標準化されます。
電子カルテはこの標準化が容易です。

2.情報の利用が容易。文字や図表の他静止画、動画等多様の情報を扱え、
データの検索、抽出、加工、複写、印 刷が容易に出来ます。
データのグラフ化は今まで分からなかったことを明らかにする事が出来ます。
LAN上の どこからでも電子カルテにアクセスして複数の医師が同じカルテを
見ることが出来ます。

3.物理的に有利。保管庫は必要なくカルテの取り出し、バックアップが容易で
CD等の複数の電子媒体にコピー 出来いざという時持ち出せます。
落雷、停電は最大の敵ですが停電はUPS(無停電電源装置)で回避出
来ます。

 現在、私が日常診療で実践している電子カルテによる診療情報の開示・公開
のささやかな試みを紹介致します。
 診察の時、患者さんにキーボードとマウスから日本語入力した診療記事をモ
ニターで見てもらっています。
ド イツ語や英語や略語更に癖字の日本語を織り交ぜて書いた今までの私の
カルテは患者さんにはまず読めません。
 病歴や症状などを入力しますと患者さんはモニターを真剣に見ております。
診療記録が読めてその内容が分か るからです。
 各種の診療データを電子カルテで閲覧すれば資料を探し出す職員の時間と
手間が省け、その分患者さんへの応 対時間が長く取れます。

 レントゲン写真、心電図、エコー写真、内視鏡写真、皮膚病変などの画像を
モニターに表示し、必要に応じて 拡大表示したり過去と現在の画像を比較表
示します。血液検査データなどをグラフ表示しますと病気の変化の状 態、即ち
良くなったか悪くなったかが一目瞭然に分かり病状の説明に威力を発揮します。
患者さんには耳と眼の 両方から情報が入りますので強い印象を与えます。
患者さんと一緒にそれを見ながら病状や治療方法の説明や生 活指導のアド
バイスなどをしています。

 今までは当院製の健康手帳に検査データを書き込んで説明していましたが
数字の羅列は病状の変化を知っても らうのにはいま一つ力不足でした。
グラフ表示したデータをプリントして渡しますと患者さんは真剣に見ており ます。
結果が良いと喜び悪いと反省しています。
 また例えば心臓の精密検査が必要な患者さんなどにはイラストや心血管造
影の動画をモニターで見て戴き心臓 の検査方法を具体的に説明しています。
これは患者さんに検査の必要性を理解して戴く上で大変役立っています。
 診療支援システムには品質管理機能としての各種のチェック機能やデータ
の検索、抽出、加工、複写、印刷など の機能があります。
 例えば処方の投与量や配合禁忌のチェックが出来ます。
 又、電子カルテでは薬剤情報提供書が印刷出来ます。
特に某社の写真付薬剤情報印刷ソフトと連動して印刷する 薬剤情報提供書
はカラー印刷なのできれいで分かり易く、更に当院で使っている透明薬袋ならば
医療側と患者さん 側との双方で薬の確認が出来服薬指導に有用です。

 診療面では充実したレセプト発行機能を持っていて電子カルテ機能と共に言
わば車の両輪をなしています。
 診療記録、薬歴、検査データ、画像等をMOやCDなどに複写出来ます。
今年(2001年)6月東大病院通院中の方 が前橋に来られた時当院を受診されま
した。帰る時胸部写真や血液検査データなどを複写したFDを紹介状と一緒に
持っていって戴きました。
 この機能を拡張すれば転院する患者さんなどには患者さん自身の診療録や
画像や血液検査データ等をCDなどに複 写したもの即ち、患者さん自身のカル
テを作って差し上げることも可能です。

 プライバシー保護の上で倫理的な問題がありますが、セキュリテイ保護の技術
も進歩しており、患者さんの合意 が得られれば診療記録や画像などの医療情報
を医療施設間で自由にやり取りでき、患者さんの全病歴が参照出来ま すので、
不必要な医療は減少します。
また医療機関相互のカルテ公開は医療の質を高めると期待されています。

 時々患者さんに電子カルテについての印象をお聞きしますと皆さんが良く分か
りとても良いと言ってくれます。
このことだけでも私は電子カルテ使っていて良かたなと思っています。
 私は聴診器だけでなく電子カルテを通して患者さんとの間に信頼関係を醸成し
冒頭の言葉にあるように患者さん の心が聞けるようになりたいと考えています。
 現在私の使っているソフトを紹介します。

 電子カルテ・レセコンシステムはDynamicsといい大阪の開業医吉原正彦先生
の著作です。
 画像ファイリングシステムはRS_BaseといいDynamicsと連動していて広島の
開業医山下郡司先生の著作です。
 尚、電子カルテ探索記録とDynamics導入記を私のHPに載せてあります。
 URL;http://med.wind.ne.jp/setaclin/

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参考文献    電子カルテが医療を変える 里村洋一編より引用
 最近,医療の世界だけでなく一般社会でも,「電子カルテ」という 言葉を聞く機会
が多くなった.この背景には,パーソナルコン ピュータの普及やインターネットの浸透に
よって医療者のコンピュータリテラシー(コンピュータ素養;コンピュータ を利用できる
基本能力)が向上し,カルテの電子化が絵空事 とは感じられなくなってきたという
技術的側面と,情報開示 とインフォームド・コンセントや医療費抑制などの医療
を取り巻く新しい流れにおいて, 電子カルテが役立つかもしれないと期待されている
という社会的側面があげられる

 電子カルテには紙のカルテではできない数多くの利点がある 例えば保管のための
スペースで、 古いカルテの保管と管理で苦しんでいる病院は少なくないが、電子
カルテならスペースは遥かに小さくて済むし、検索 も容易である 端末があれば
システムのどこからでも同じカルテが閲覧できることも利点である 紙のカルテでは
患者 が検査や他科の外来を受診しているときは カルテも一緒に運ばれているの
で見ることができない 電子カルテであれ ば複数のスタッフが同時に同一のカルテを
使用できる.またインターネットなどを利用して施設間の連携や情報交換も 容
易になる

 カルテは単に医療関係者間の情報伝達手段ではなく まして医師の備忘録など
ではなく患者個人 に対しても 保険の管理組織に対しても 行われた医療サービス
の内容を説明するための資料として位置づけられる ようになってきている 医療の内
容を社会に説明する責任(accountability)は日本でも徐々に明確になり
つつあり  医療費の公正さを説明する情報の提供は不可欠で カルテの重要性は
ますます高まるであろう これまでのように片手 間に管理される状況は いつまでも許
されるはずがない 

電子カルテの定義
 電子カルテの明確な定義は 実はまだない このため,電子カルテの関係者すべてが
それぞれの 電子カルテ像を心に描いている 手書きのカルテをスキャナで取り込んで
電子的にファイリングするだけのものや 書 き込みを手書きからワープロに変えただけの
ものから 構造化されたデータ記録を行い オーダエントリーや診療支援 システムとも
連携するものまで様々であり このことから少なからぬ混乱も生まれている これは目
指すものの違いで あり 電子カルテの可能性をどう捉えているかという意識の違いによる 

電子カルテと紙カルテの比較
紙のカルテの問題点

  1. 他人には読み取れない乱雑な記録になりやすい
     医師には悪筆が多い(?)上に 狭い領域の専門家や一部の仲間(時には
  2. 自分一人)にしか通用しない略号が繁雑に 使われるため 記入者にしか読み
  3. 取れないことも少なくない
  4. 診療上あるいは管理上で必須の情報が欠落する
     規格やガイドラインのない記録様式では医師の思いつくままの記録しか残ら
  5. ない欠落し た情報は記入者本人の頭の中にあるかもしくは全く意識されて
  6. いない
  7. 表現が多様で統一性がない
     英語 ドイツ語 日本語 仲間内の符帳が混在し 同じ事象についての
  8. 表現が様々である
  9. 表示形式が固定されている
     診療経過におけるそれぞれの時点の記述に限られていて 経過を通しての横断
  10. 的な情報表示ができない
  11. 容易に複製を作れない
     同時に1カ所でしかカルテを使えず 情報の統合化の妨げとなる ただし これ
  12. はセキュリティ上は利点でもある
  13. 診療目的以外に利用しようとすれば必ず情報の抽出作業をしなければならな
  14. い レセプト作成には毎月莫大な労力が費やされている 研究目的で情報を
  15. 検索する際にも大変な労力が必要となる
  16. 保管のために必要なスペースが大きい
     カルテは年々増え続けて管理庫を圧迫していき 古い情報の取り出しは困難
  17. になる
  18. 火災などの災害に弱い
     通常バックアップは取られていないので災害時には弱い ただし 電子カルテと
  19. 違い停電には強い
  20. 文字と画像の一部しか記録できない
     文字の他にはスケッチと写真(レントゲンフィルム以外)しか扱えない

aからcまでは記述が標準化されていないことからくる問題点であり dからfは情報
の後利用に関するもの  gからiは紙の物理的性質からくる制約である カルテの
電子化(電子カルテの実現)はこれらの紙のカルテの問題点を解決 するためにあると
いってよい
 
電子カルテの利点

  1. 管理スペースが少なくて済む
     コンピュータの設置や管理のスペースは他の情報システムと共有できるから 
  2. 紙のカルテの収納庫の10分の1以下となる
  3. 病院管理のためのデータ集計ができる
     諸種の統計の他に 保険請求が半自動で可能
  4. 臨床医学研究にデータが利用できる
     広範囲 長期間かつ莫大に臨床データを集めることが可能になり これによって
  5. EBMなどの基礎となるデータが得られる
  6. ネットワークでスタッフが情報を共有できる
     端末があればいつでもどこでも情報にアクセスできる また データを各部門が
  7. 共有することでチーム医療の円滑化となる  以上は院内のネットワーク化である
  8. が これを院外にも押し進めると地域連携システムとなり 地域医療の活性化や
  9. 質の向上 につながる
  10. 同じデータを何カ所にも転記する必要がない
     作業は瞬時に終了し 誤記の心配も無い
  11. 同じデータを全く異なる書式で扱える
     各部署の要望や診療の状況に合わせてデータを様々に加工して表現するこ
  12. とができる グラフ など表現形式を変えることで 今まで見えなかったことが見え
  13. てくる場合もある
  14. 定型文書の自動作成
     診断書や紹介状 病歴要約などの作成では 必要なデータを抽出してくる
  15. ことで半自動的に作成できる
  16. 診療支援
     医学教科書との連動や 定期的検査の自動アナウンス 誤りの自動チェック等
  17. が現時点でも技術的に可能である 将来的 にはAIによるエキスパートシステム
  18. との連携も可能となるであろう
  19. マルチメディアデータを一緒に扱える
     静止画だけではなく 動画 音声などのマルチメディア情報を統合して扱える 
  20. イントラネット インターネットと接続 することで医学教科書などの膨大な情報
  21. にアクセスし 取り込むことができる

電子カルテが医療を変える 里村洋一編

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