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     第8回 観音山丘陵の自然を守るネットワーク会議 講演会報告  
                                  平成19年10月23日午後7時〜
                                  高崎市総合福祉センターにて

       「群馬のカエルたち」 群馬県自然保護連盟会長 金井賢一郎
               内容は、講演のビデオを見ながら西野が書き取ったものです。

        観音山中心にした学習会と聞いたが、観音山だけの両生類だけでは物足りないのではないかと思う。
       群馬のカエル、両生類の話をしましょう。ということにした。
        西野に群馬県全体ではカエルが13種、イモリなど有尾類が5種で全部で18種と言ったら「そんなに
       少ないんですか!」とビックリしていた。
        たしかに、身の回りにいる鳥やその他の動物などはもっと多いので無理もないかなと思った。
        両生類は数でいくとマイナーなものだ。

                  


        両生類を学び始めて40年々か経つ。小さい時は皆さんと同じように、一生懸命昆虫を追い回していた。
       途中から両生類に変わった。
        その動機は、大嶺山、今の水上町、昔の月夜野町の古沼(こぬま)のモリアオガエルが天然記念物に
       指定されたことだった。これが昭和38年のこと。これを、皆で調べてみようということにった。
        昭和39年から調べ始め、両生類に首を突っ込み始めた。
        今は、全国的な調査や外国の調査などにも参加して活動を続けている。





      本日は、両生類が生物全体の中で、どういう立場にいるかということを話したい。

      カエルとは、脆弱なものである。2つの世界がないと生きていけないもの。
      2つの世界とは、1つは水、1つは陸。
      陸と水の両方に生きられると言うが両方無くては生きられないという、脆弱なものだ。
      弱くてもろい脊椎動物である。
   
      つまり、両生類(カエル)を見ていくと、卵を産むのは水の中でないといけない。
      親としては陸に生活するが、親は水中に卵を産まなくてはならない。
      カエルの卵を見ればわかるが、水がなければカラカラになって死んでしまう。
      陸上生活するようになった最初の脊椎動物と考えても良いが、子孫を残していくには水とは離れられない。
      特に日本のものはそうだ。世界には、親が卵を背中に背負って育てるようなかわったものもあるが。
      オタマジャクシにはえらがある。えらで水中の酸素を取っている。
      オタマジャクシからカエルになるには大きな変化がある。えらが無くなって肺呼吸になる。
    
      地球46億年の歴史の中で、脊椎動物が出てきたのは3億6400万年前で、一年間の暦にすると、
      12月3日の2時何分かに脊椎動物が出現し、人間は12月31日にやっと出現する。


     〈スライド及びカエルの鳴き声テープの紹介〉

   
  カジカガエル(アオガエル科)
         
         石原の雁行川にもいる。
         子供の頃、観音山丘陵一帯を遊び場にしていたが、カエルは夜行性なのでかもしれないが、そのころ
        カジカガエルの声を聞いたことは無い。
         その後も注意していたが、聞いていなかった。昔はいたと伝えられていた。
 
         おととしの6月に声を一回聞いた。去年と今年は、たくさん聞こえた。シュレーゲルアオガエルもいる。
         橋の所に町内会の名前でカジカガエルがいる川と紹介されていた。鳴くのは6月〜7月上旬。

         最近カジカガエルは良い声で鳴くので有名になり、オタマジャクシを売ることもある。
         昔は、貴族が自分の庭に放して鳴き声を楽しんだという。
         以前見かけた時、ヤマアカガエルのオタマジャクシをカジカガエルのオタマジャクシとして売っていた。

          雁行川のカエルが昔からの子孫か持ち込まれたものかは分からない。
          山の清流域に多いが、烏川では、高浜の焼却炉より上流にはいる。倉渕にもいる。

          カジカガエルをお腹から見た写真の説明。体長の計り方。吸盤の様子など。
      
     
シュレーゲルアオガエル
(アオガエル科)

          緑だが暗い所に置くと黒紫色になる。カエルを探そうとして緑と思って探すと見つからない。
         カエルは身を守る必要から環境に合わせて色を変える。アマガエルの方が変化が大きい。

         モリアオガエルとの一見しての違いは、眼の光彩が黄色いこと。

          コロコロときれいな声で鳴く。谷戸のところにでたくさん鳴いていた。水田性。
          雁行川にもいる。カジカガエルと同じ時期に鳴く。

          一般には、カエルは繁殖期の時だけ鳴く。
          アマガエルは雨が降る前に鳴くというのは特別。アマガエルは4〜5月に水田でさかんに鳴く。
          
          シュレーゲルという人が調べたので名前になった。日本の固有種。(日本だけにしかいない)

          土の中に泡上に卵塊を産む。土の中だが、水辺に近いか湿っている所。
          オスとメスが一緒に土にもぐって泡を作って卵を産む。
          泡上の卵を産むものとしてもう一つモリアオガエルがある。こちらは樹の上に産卵する。
   
  
     ウシガエル(和名) 食用ガエルとも言う。地方によっていろいろ呼び方がある。学名は一つ。

         一番大きい。14〜5cm。 
         大正11年にアメリカから持ち込まれた。農業政策として、また、栄養の蛋白源として。

       食べると鶏肉みたいでおいしい。

         オタマジャクシも大きい10cmくらいある。
        
         なんでも食べる。パクパク食べる。シュレーゲルアオガエルやアマガエルも食べる。

         在来種から見ると、にくい存在。

     アズマヒキガエル(ガマガエル、ツチガエル、イボガエルという地方も)

          地方により呼び名が違うので調査のとき注意しないと間違う。写真を見せるなど。

        ウシガエルよりやや小さいが大きい。10cmくらい。

          ストレスかけていじめると白い粘液を出す。
          ガマの油の口上のものだが、切り傷に効くかどうか知らない。
          もっといじめると背中のボツボツからも白い液を出す。

          ヒキガエルは、他のカエルのようにピョンピョンとは飛ばずノソノソと言う感じ。
          いわゆる毒素などは、身を守るため。犬が構って白い液をかけられ失明した例もある。

          縁の下などにもいる。他のカエルと比べると水分が少ないところでいられる能力。
          適応して生きている。

          ヒキガエルの仲間にはニホンヒキガエルとアズマヒキガエル。
          外来種にオオヒキガエル。これは小笠原にいる。


     ヒダサンショウウオ
        
          カエルは無尾類。サンショウウオは有尾類。

          ヒダサンショウウオは今年(平成19年2月)に県の天然記念物に指定された。
          群馬県では絶滅危惧種。上野村と中里村のごく一部にしかいない。
          このままではいなくなると心配されている。

          きれいな黄色い斑点がある。非常にきれい。
          卵嚢はコバルトブルーに光る。
          現地で見るときれいで本当にびっくりして感激する。
          この世にこんなにきれいなものがあるんだろうかという感じ。

        群馬県にいてしあわせだなあと思う。
          
          西日本に多い。新潟、群馬、埼玉より東にはいない。群馬が東限。貴重。
          群馬県などの東日本にいるものと西日本にいるものは、大きさ繁殖時期など違う。
          別な種かもしれない。酵素蛋白など遺伝子的な研究がされている。


     トウホクサンショウウオ

        東北6県と群馬、栃木、茨城、新潟のラインが南限。北海道にはいない。
          平成5年に金井先生が見つけたものが全国の南限。
          いないだろうと思って見ていたら、いたので、大喜びした。
          ヒダサンショウウオよりは数はまだ少し多い。

             
                   トウホクサンショウウオの卵 写真提供:多葉田さま
                          
        
  (サンショウウオとイモリの形態学的違い。種の同定には口の中の上顎の歯を調べる。)


    アカハライモリ(和名)(イモリは両生類の有尾類。ヤモリは爬虫類)

       腹が赤い。模様がある。
         模様が一匹毎に違うので、戸籍になる。たくさんの固体の模様を記録して研究した人がいる。
         卵は一粒ずつ葉っぱを折りたたんだ中に産む。子どもの観察に適している。
         田んぼなどにいたが最近ほとんどいなくなった。昔の農薬の影響から回復できないのか。
         孵化後、一度、陸へ上がるが、また水中生活に戻って一生過ごす。


    モリアオガエル

       お腹の膨らんだメスが樹の上に上っていくとオスがきてペアーになる。(樹上産卵)
       オスは一匹だけでなく、何匹も来る。
     
       卵塊は泡を攪拌することで作られるので、複数のオスがいる意味がある。泡作りにションベンが必要。
       卵塊は大きいもので15cm、小さいもので7〜8cm。
       オスの数と卵塊の大きさが関係あるかどうかはわからない。
       一箇所に複数の卵塊があることもある。
       池の縁に生むこともある。

       シュレーゲルアオガエルと比べて目の光彩が赤っぽい。
       体の色は緑から茶色に変わるが光彩の色は変わらないので区別つく。
       モリアオガエルとシュレーゲルアオガエルは同じような所にもいるので区別必要。

       各地で天然記念物になっている。国の天然記念物に指定されているものもある。

   

     アマガエル

        ゲコゲコ鳴く。
        繁殖期意外にも気圧が下がるとなく。
        アマガエルには眼の後ろに黒い模様がある。シュレーゲルアオガエルはない。これが違い。
        アマガエルには、色々な色のものが出現する。アルビノで黄色いものも。
        色の変化は脳下垂体を介してホルモンによる。カメレオンは神経を介するので変化が速い。


    
 最後に、皆様に「カエルを愛して欲しい」「好きになって欲しい」と言いたい。
     同じ小国のイギリスに比べ日本の両生類の種類は多い。

     日本の80%は固有種。それでも世界の数%しか日本にはいない。
     我々の仲間であり、非常に弱い存在。食うものであり、食われるものである