第6回観音山丘陵ネット会議報告 平成19年8月21日夜7時〜高崎市総合福祉センター
「群馬のメダカの現状」
講師:野メダカを育てる会 大山啓三先生(前橋市立大胡小学校校長)
お話しいただいた内容の要旨をお伝えします。(文責:西野)
(先生は、当日、参考資料数枚をお配りくださり、また、メダカのいる風景や生態の写真をたくさんスライドでお示しくださいました。資料などは、インターネットで公開してよいものかどうかわかりませんので、西野が理解した範囲の文章による要旨だけを掲載します。)
【研究のきっかけ】
自分が子供の頃は、コイやウナギを捕まえることに興味があったが、メダカについてあまり印象がなかった。6月の田植えの頃、清水がわく所に小さいメダカがたくさんいたのを見た記憶はあるが、あまり、メダカというものを意識していなかった。ところが、メダカが絶滅危惧種になったと聞いてビックリした。
【野メダカを育てる会の発足】
平成5年に発足した。会は前橋市児童文化センター内にある。
5年生の理科でメダカの学習をする。メダカをペットショップなどから入手して学習するが、どこのメダカであるとか、勝手に川に放流するのをまずいとかなど考えていなかった。
理科の学習で、野メダカの飼育をすることで、野メダカの減少を知り、水の惑星「地球」の環境の学習として、市民といっしょにやる活動として、メダカの保護を始めた。
【メダカの生息地調べ】
4年間、教職の現場を離れたので、土、日を群馬県内のメダカ探しに費やした。
ヒメダカや他の地域のメダカが放流されている場合、土着のメダカが生息しているとはいえない。
「メダカがいる」と聞いて、行ってみると、他の魚(モツゴやウグイ)などの稚魚であることが多い。自分で確かめないと、正しい調査にならない。
夏の間、メダカは増えて、流がされて、コンクリートの小川にもいることがある。その時、たまたまメダカがいても、生息しているとはいえない。冬を越して、生息しているところが生息地といえる。
メダカは、自然にはあまり遠くまで泳いで移動しない。土着のメダカを大切にする必要がある。
【メダカのいる風景】
群馬では、現在のところ、東毛にしかいない。
多々良沼(コイのいる沼にはいない)
新田町の小川(湧き水があり、小川がコンクリートで覆われていない)
板倉町の渡良瀬川が入るところ
1972年の県理科研究会の調査では、もっと県内で広く生息していた。
ビオトープ作りで、メダカを育てることも大切だが、本来のメダカのいる自然の風景や場所を大切にしたいものだと思っている。
【メダカの一生】
メダカは、一年中、水があるところに居るわけではない。流れのある小川より、むしろ池などを狙って探している。
『メダカ(魚)は陸で育つ』と言われる。冬に、田んぼに水がなくなることで、田んぼの土がリフレッシュされる(消毒される)。
水がなくなると、ほとんどのメダカは、干からびたり鳥に食べられたりして死んでしまうが、ごく、一部はどこかの水溜りで冬を生き延びる。
春になり、田んぼに水が入り、水温が上がると、ミジンコなどの餌が豊富になり、メダカもそれらの餌をたべて、ドンドン増える。メダカの成長は速く、一匹が生む卵の数も多い。寿命は自然の中では1〜2年。
【メダカと他の生物たち】
メダカのいるところには、ナマズ、ドジョウ、オタマジャクシなどもいる。これらも「陸で育つ」というのはメダカと同じ。
コイがいると、メダカはいない。
タガメはメダカの体液を吸う。その死骸をゲンゴロウがすべて食べる。
群馬には、タガメもゲンゴロウもいなくなってしまった。
カダヤシは埼玉にはいるが、群馬にはいない。
【空とぶメダカ】
メダカは長距離を移動しないと言ったが、離れたところにメダカがいることがある。
サギなどの水鳥の脚に卵がくっ付いて移動するといわれている。卵は丈夫で粘着力が強い。
昔は、田植えのとき苗を互いに融通し合う風習があったので、余った苗を田んぼに放置しておいたものが、他の田んぼに移動するとき、卵がくっ付いて移動することもあっただろうと考えられる。
【メダカの姿】
口が上のほうに付いている。水面のものを食べる。
シリビレが発達している。
メスが卵を産むときに、オスがメスをシリビレとオビレで抱くようにするので、オスのシリビレは大きい。
メスのシリビレは三角。オスには切れ込みがある。
【メダカ探し】
天気の良い時でないと見つからない。
群れを作って泳ぐのが特徴。メダカの学校の歌のよう。
川より、池、沼で探す。コイがいると駄目。
メダカは、冬、氷が張っても生きている。
夏に水温が40℃〜50℃の高温でも大丈夫。塩分がある水でもOK。
【日本メダカの仲間】
メダカの仲間をオリジアスという。苗という意味。田んぼと関係が深い生き物。
アジア固有の淡水魚。14種類を確認。実は、サンマの仲間。
日本メダカは、北限で東限。
他のメダカとの交雑は子までで、孫は生まれない。
【日本メダカのお国柄】・・・ところ変われば、メダカも変わる
遺伝子を新潟大学が研究しており、各種のメダカを保存、分析している。
日本メダカは遺伝子的に4つに分類。
中国・西韓集団
東韓集団
北日本集団
南日本集団(東日本型、東瀬戸内型、西瀬戸内型、山陰型、など)
これらの型は遺伝子レベルで10%の違いがあり、人とチンパンジーの違いより大きい。
お国柄を大切に、地域にいるメダカを守る必要がある。土着のメダカ
【群馬のメダカ】
前橋では絶滅したと思われていたが、個人宅の敷地の池で(田んぼとつながっている)野メダカが見つかった。
通称「前橋メダカ」と言っているが、遺伝子は、他の群馬県のメダカと違って、瀬戸内タイプだった。
新潟側と太平洋側のメダカの遺伝子は大きく違うので、沼田あたりでメダカが見つかれば、境界だから、どちらの型 か興味深いデーターになる。
メダカがいないと思っているところでも、皆で探せばいるかもしれない。
【ヒメダカのこと】
ヒメダカは、江戸時代に突然変異のものを観賞用に飼育したもの。
金魚を飼育するのが人気だったが金魚は高価だったので、庶民はヒメダカを飼育して楽しんだ。
ヒメダカとクロメダカの子は皆クロメダカになるが、孫は1:3でヒメダカになる。メンデルの法則。
【メダカの研究材料としての利用】
短時間でたくさん卵を産み成長するので、研究に便利。
宇宙メダカは2000匹のなかの4匹。(丈夫なメダカ)宇宙で産卵と発生が確認できた。
シースルーメダカ・・毒物の研究に開発
水質指標生物として
発生学や遺伝学の研究に
<質疑・応答>
他のメダカとの交雑について・・・他のメダカとは孫はできない。
卵について・・・・とても丈夫。粘着性がある。指で押しでも簡単にはつぶれない。冬、卵で越すものもあるかも。
ヒメダカの飼育について・・・・放流しなければいい
飼育について・・・衣装箱はすぐに駄目になる。丸い盥が一番丈夫。ヤゴがいると駄目。
ずっと飼育するのは、結構難しい。
会に参加した方々は、皆さん、今まで、メダカがいるかどうかそんなに気にしていなかっとおっしゃっていました。
「本当に、居ないのか?」と、改めてメダカが居るはずの環境について思い浮かべておられました。
山名で無農薬自然農法をしていらっしゃる方のおはなしでは、田んぼの水は、ポンプで一斉に送られ、冬には、水路(コンクリート)にも水がなくなるので、メダカはすめないでしょう。とのことでした。
昭和40年代までは、メダカもウナギもいたという情報もあります。
城山小エコクラブでは、近くの小川を探してみましたが、メダカはいませんでした。
また、野めだかを育てる会からいただいたメダカをビオトープの池に放流しましたが、4年で水草と落ち葉で池が埋まり、
冬は水枯れ状態で、ヤンマのヤゴがたくさんいたことも重なって、全滅してしまいました。
丈夫なメダカですが、ずっと、きちんと、育てるのはなかなか大変だと言うことがわかりました。
野メダカを育てる会では、多くの人が手分けして群馬の野メダカを育てることで、絶滅させないようにしたいと、毎年、春に、メダカの配布活動もしていらっしゃいます。