pastlogs

「やけど」「湿疹?イボ?」「日焼け」「ニキビ」「乾燥肌」

やけど

 寒さが厳しくなり,暖房器具が活躍する季節です。この時期やはりやけどには注意が必要です。体表面積の10%を越えるようなときは,生命に係わることがあるので,入院設備のある総合病院などへ駆け込むべきです。だいたい片腕の面積です。やけどは正式には熱傷といって,その深さによって概ね四段階に分類され,表皮・真皮浅層・真皮深層・皮下熱傷となります。水泡を形成するのは真皮の熱傷です。真皮深層から皮下の熱傷は痛みが鈍くなるので,痛くないからといって軽んじてはいけません。むしろ重症なことが多いのです。真皮浅層までの深さなら薬物療法で改善を図りますが,より深いものでは専門的な手術を考慮する必要もあります。特に手の場合は機能重視の必要があり,早期の手術が薦められています。カイロや湯たんぽによる低温熱傷も痛みが少なく重症化が見られます。
応急処置としてはまず冷やすことです。医療機関で処置するまで冷水冷却を続けてください。水泡は血流を妨げない限り,基本的には破らないほうがきれいに早く治ります。(水泡の早期除去を薦めるDrもいます。071123加筆)

湿疹?イボ?

 年齢とともに皮膚も老化します。ジクジクした皮疹が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら,少しずつ大きくなり,顔面,手背,耳介,肩など日光露出部に生じる「日光角化症」,発赤を伴い体幹などを中心に生じる「ボーエン病」など,まれならず見受けられます。これらは悪性腫瘍の仲間ですが,早期に治療すればほとんど根治できます。いわゆる「湿疹」に似ているため,見逃されている事があります。
 イボの様に見える皮疹もあり。その大部分は「脂漏性角化症」という良性の腫瘍で,心配することはありません。逆に単なるイボと思って見過ごされているものにも,悪性を疑わせる例があります。これらを早期に発見し,適切な対応を行うことが,我々皮膚科医の責務と思います。「悪性かもしれない」と疑って診ることが重要です。最初から診断を確定することが難しい例もあり,そのようなときは経過を観察する必要もあります。


日焼け

 肌を露出する機会が多くなるこの時期,紫外線対策は重要です。紫外線にはA,BとC波があり,C波は地上に届きません。B波はいわゆる日焼けを起こし「レジャー紫外線」とも言われます。A波はシミやしわの原因になり「生活紫外線」とも言われます。露出する部分には日焼け止めを使うのが有効です。様々な商品があり,"SPF30 PA++"などと表示されてます。SPFはB波に,PAはA波に対する防御能を示してます。例えばSPF30とは「ある陽射しの時,10分で紅くなる人が,その日焼け止めを使えば10分x30=300分(5時間)で紅くなる」という事を示しています。しかし実際には汗などで時間と共に落ちてしまうので,屋外での活動の時はSPF30程度の物を2〜3回塗り直しましょう。プールや海水浴で急に日焼けを起こすと,ヤケドと同じ状態の「日光皮膚炎」になります。これは専門医による治療が必要です。

ニキビ

「青春のシンボル」とも言われるニキビですが,多感な思春期には気になる物です。ニキビは毛に付属する皮脂腺とその周囲で起る炎症です。思春期に性ホルモン(アンドロゲン)の分泌が増え,感受性の高い皮脂腺の活動が活発になり,滞った皮脂やニキビ菌等が作用し強い炎症を起こしてきます。毛穴を塞ぐことが発症を助長します。(場合によってはお化粧を控えて)洗顔によりこれを防ぐことが重要です。膿が貯まったように見える時,無理に押出そうとするとかえって悪化させることもあります。通常炎症を抑える作用のある抗菌剤を飲んだり塗ったりします。漢方薬が効果的なこともあります。食べ物のせいと考える方もいる様ですが,増悪因子は様々で十人十色も過言ではありません。性ホルモンに支配され,皮脂貯留が契機の炎症ですから,決して思春期だけのものではありません。ニキビ痕になってしまうと治療は一層難渋します。早めに専門医に相談しましょう。

乾燥肌

 湿度の低下にともない乾燥肌の方は注意が必要な季節です。皮脂の分泌が減少し,カサカサや亀裂ができたりします。皮脂は分泌され皮表を覆い,角層内水分を保持すること(保湿)で柔軟性を保ち,更にその抗菌性と共にバリア機能を発揮します。皮脂の分泌が減少するとバリア機能が破綻し刺激を受けやすくなり,その結果『皮脂欠乏性皮膚炎』が生じます。加齢とともに特に下肢を中心に見られます。この状態を背景とした『貨幣状湿疹』を生じたり増悪させたりします。また,アトピー性皮膚炎も悪化します。
 保湿剤を外用し「お手入れ」をしてあげることが大切です。入浴で清潔を保つのは大切ですが,石鹸の使用回数を減らしたり弱めのものにしましょう。また,炎症の部位にはステロイドを外用して炎症を抑えることも必要ですし,痒み止めを内服することもあります。
 口唇も乾燥して不快感からなめてしまいます。「乾いてはなめ」を繰り返すことで皮膚炎を生じてきます。一度荒れた唇は食べ物,化粧品や歯磨き粉など様々な刺激を受け続け,しゃべることで傷の安静も保てません。ワセリンや非ステロイドの軟膏を頻回に使うことで患部を保護して,なめる回数が減るだけでも改善が期待できます。化粧品や歯磨き粉など,避けられる刺激は避けることも必要です。